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保育士の有効求人倍率推移から考える!保育業界の人手不足の実態

読了の目安:約7分
保育士の求人傾向の推移
転職を考えている保育士にとって、保育士の需要がどれくらいあるのかは気になるところです。また、保育業界の将来性がどのようなものかを知っておくことができれば、今後のキャリアアップや転職の際に知識を役立てることができるでしょう。そこでこの記事では、保育業界の実態と今後の見通しについて詳しく説明します。保育士の給与や待遇が改善される見込みについても取り上げますので、安心して長く働ける職場環境を探している方はぜひ参考にしてください。

今回のポイント

保育士の有効求人倍率は全国平均で2.76倍と高く、深刻な人手不足が問題となっている。

「賃金の低さ」や「労働環境の悪さ」に不満を抱く保育士が多い。

国や自治体の施策により、保育業界の労働環境は改善されつつある。

保育業界は人手不足!有効求人倍率の推移から見た現状

最近、ニュースで待機児童の増加や保育士の不足について取り上げられることが増えています。実際に抽選に漏れてしまい、子どもを保育園に入れることができずに困っている人を知っている方もいるかもしれません。この背景には、共働き世帯が増えたことで、子どもを預けたいという保護者の需要が以前よりも高まってきているという実態があります。それにともなって、待機児童問題を解消しようと国も率先して保育所の整備を進めており、運営費を支援するなどの政策を打ち出しています。その結果、各地で保育所を増設する動きが広まってきています。

こうした活動によって、待機児童問題は解消されつつありますが、一方で保育士の不足という新たな課題が浮き彫りとなってきています。ここでは求人倍率から保育士不足の現状について解説します。

有効求人倍率とは?

有効求人倍率とは、求人票の数を求職者数で割ったもので、求職者1人に対して何件の求人票があるのかを示す数値です(有効求人倍率=求人数/求職者数)。有効求人倍率が1倍以上であれば、1人あたり1件以上の仕事があるので、人手不足で人材へのニーズが高いことを示します。反対に有効求人倍率が1倍未満であれば、1人に対して1件以下しか仕事がない状況なので、人余りで人材へのニーズが低いことを示します。

例えば、求人倍率が2倍の場合を考えてみます。求人倍率が2倍ということは、求職者1人に対して2件の求人が出ているということなので、人材が不足している状態です。企業側は何とか人員を確保したいと思っているケースが多いので、新たな就職先を見つけやすい状況にあることがわかります。

気になる保育士の有効求人倍率は?

保育士の有効求人倍率は、2017年度の全国平均で2.76倍となっています。これは1人に対して2.76件もの求人があるということです。2017年度の全国・全職種を平均した有効求人倍率は1.58倍ですから、一般業界と比べて保育業界が深刻な人手不足の問題を抱えていることが分かります。特に東京都の有効求人倍率は2017年10月時点で5.99倍ときわめて高く、深刻な人手不足に陥っていることがわかります。

保育士の人材不足はなぜ続くの?その原因とは…

ここでは保育士の人材不足がなぜ続くのか、その原因に迫ってみます。厚生労働省の保育士等確保対策検討会が作成した「保育士等における現状」の「保育士における現在の職場の改善希望状況」の項目を見てみましょう。この項目には保育士が現在の職場に希望している改善点に関する調査の結果がまとめられていて、「給与・賞与の改善(59%)」「職員数の増員(40.4%)」「事務・雑務の軽減(34.9%)」「未消化(有給等)休暇の改善(31.5%)」を希望している保育士が非常に多いということがわかりました。

言い換えると、現在の職場の「賃金の低さ」や「労働環境の悪さ」に不満を抱いている保育士が多数存在していることを示しています。その結果、保育士の離職率の平均は10.3%を超え、私立保育所に限れば離職率は12%にも上るというデータが出ています。

離職率が高いことを裏付けるデータは、ほかにもあります。一般的に平均勤続年数が長いほど継続して働きやすい労働環境が整っていると言われています。保育士の平均勤続年数は7.6年、平均年齢は34.8歳、平均月給は21.6万円となっています。これは全職種を平均した勤続年数12.1年、平均年齢42.1歳、月給32.9万円と比べて著しく低い水準であり、保育士の労働環境が悪い傾向にあるということを示しています。さらに、常勤で働いている人の保育士の経験年数を見てみると、平成25年の社会福祉施設等調査から4年以下の経験年数の保育士が28.5%を占めているという現状があります。

これらの結果から、働く職場は多いのにもかかわらず保育士不足が深刻な問題となっていることがわかります。こうした保育士不足を解決するため、厚生労働省や各自治体は対策に乗り出しています。

それでも保育士を続けたい。今後、保育業界の労働環境は改善されていく?

前述した現状を踏まえて、保育業界の人材不足を解消するために国や自治体がさまざまな改善策を実践しています。そのため、保育業界の労働環境は改善されていくと言えます。

たとえば厚生労働省では、待機児童の解消を目指して「待機児童解消加速化プラン」を実行中です。現在、その一環として「保育士確保プラン」を打ち立て、6.9万人の保育士を確保するためにさまざまな取り組みを実践しています。

 保育士確保プランの内容

厚生労働省が実施する保育士確保施策には基本となる「4本の柱」があり、①人材育成②就業継続支援③再就職支援④働く職場の処遇改善から成り立っています。それぞれどのようなものか一つずつ内容を確認していきましょう。

人材育成

保育士として働く人材を確保するために、保育士資格を持っていない未就業者の就業支援や、幼稚園教諭免許保有者の資格取得補助などを行っています。ほかにも保育士養成施設の受講費の支援や、保育士試験を年二回実施する取り組みも進めています。

就業継続支援

保育士の離職防止を目的とした研修支援や、就業継続・職場定着のための助成金を支給しています。労働環境整備を通じた職場定着のための助成金の積極的周知という項目があることから、助成金の存在はまだまだ知られていないようです。

再就職支援

ハローワークや保育士・保育所支援センターでの就職あっせんや相談支援、再就職前の実技研修などを行うことも盛り込まれています。保育士資格を持っていても保育士に従事していない潜在保育士に対する働きかけも行っています。

働く職場の環境改善

給与を平均で5%改善する処遇改善の実施や、「副主任保育士」「専門リーダー」「職務分野別リーダー」といった役職を設置する取り組みを進めています。また、健康づくり制度や研修体系制度の導入などによって働きやすい職場の実現を目指しています。

保育士の給与や待遇は年々改善している!自治体ごとの取り組みにも注目

保育士の給与や待遇は年々改善される傾向にあり、自治体ごとに処遇改善制度や補助制度なども導入されています。

千葉県松戸市の「松戸手当」

千葉県松戸市では保育の質を向上させるために、「松戸手当」という制度を実行しています。この制度では、支給金額は各保育士の勤続年数に応じて、市内で働く保育士を対象に給料とは別に毎月4万5000円~7万2000円が支給されます。市内に住む新卒の保育士の家賃補助や、就職時の支援補助も行っています。

東京都の「借り上げ社宅制度」

借り上げ社宅制度とは、保育園側が借りた物件に保育士が住み、その家賃の全額または一部を補助する制度です。東京都ではこの補助基準額が一戸あたり月額8万2000円と定められており、国や東京都、市区町村、保育事業者が負担しています。自治体によっては助成金が上乗せされていて、千代田区では最大13万円が支給されます。

おわりに

保育士の有効求人倍率は高く、いまだに全国的な保育士不足問題は解消されていません。しかし、裏を返せば、保育士の人員を確保するために労働環境がさらに改善されていく見込みがあるということです。現に国や自治体によって保育士の給与や労働環境の改善や人員増強につながるさまざまな施策や取り組みが進められています。保育士にとって働きやすい職場環境が整えば、子どもの成長を間近で見守れる保育士という仕事の魅力がさらに増すことでしょう。

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参考資料

保育士確保等検討会
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11901000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Soumuka/4.pdf

厚生労働省 保育士確保のプラン公表
https://goo.gl/igi7t9

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