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ネグレクト(育児放棄)に気付いたとき、保育士がとるべき対応は?

育児放棄など、周りが「え!」って思うようなことが実際に起きています。保育に携わるものとして子供たちのサインを感じてあげるのはとても重要ですよね。

■子どもが「虐待」されるということ

子どもが「虐待」を受ける話などを見聞きすると、胸が締め付けられるような、暗く切ない気持ちになります。子どもを持つ親、保護者や、子どもにかかわっている保育者などが普段、子どもの様子を目にしていると、子どもとは本当に希望にあふれ、愛されてのびのびと未来に向かっていくべき存在なんだな、と思うことが多くあると思います。

しかし、そんな子どもとして当たり前の姿とは全く違い、苦しんでいる子ども達が実際に存在しています。赤ちゃんとして生まれてきたときには自分では何もできず、周囲のケアと愛情のもとに、少しずつ段階を踏んで成長し、自分自身が長い人生を歩んでいくための全てを得ていく、それが子ども時代のはずです。虐待を受けている子どもは、正しくケアを受けることができなかったり、さらには害となるような行為を受けたりすることがあります。

その子が得るはずのもの、自分の人生のためのステップをしっかりと自分のものにできません。人生そのものが虐待によって短いまま閉ざされてしまうこともあります。保育者、保護者、そして子ども達と同じ世を生きる、さまざまな大人の方に虐待について考えていただきたい、との思いで記事をお伝えしていきます。

■何が虐待か、そしてネグレクトとは

子どもの虐待のニュースが、たびたび流れます。児童虐待が「事件」となるケースは日本国内で急増しています。2016年3月に発表された警察庁の統計によると、前年(2015年1月~12月)、児童虐待事件の検挙件数は785件で、前年(2014年)に比べ12.5%増加しました。被害者である子どもの数も807人と、前年より14%増加しています。

また、警察から児童相談所に通告した児童の数は37,020人に上りました。どの数字も過去最悪ですが、事件となるのは実際の虐待のうちのほんの一部という見方もあります。子どもが死亡する、あるいは重体、重症という状態になって初めて事件となる場合も多いからです。児童虐待は、厚生労働省の定義により4種類があります。「身体的虐待」は殴ったり蹴ったりをはじめとした暴力です。

「性的虐待」は性的な行為をする、見せる、ポルノグラフィの被写体にするなどです。「心理的虐待」は無視する、脅す、きょうだい間で差別するなど、心理的に抑圧することです。そして「ネグレクト」は育児放棄ともいい、食事や清潔に関する世話を放棄したり家やその他の場所に閉じ込めたり放置したりすることです。こうして現実にある虐待行為について挙げるだけでも心が重くなります。本記事ではネグレクトを取り扱います。

■ネグレクト(無視、放置)される子ども

 

保育士 ネグレクト

 

ネグレクトは「怠る」という意味の英語です。転じて子どもに対して保護者などの養育者が当然、与えるべき保護や養育をしない虐待の呼び名となりました。子どもは自分だけでは衣食住を整えることはできません。人として育つためのケアが絶対に必要です。体を育て、心を育てるのが養育者の義務です。それを放棄する……。食事を十分に与えない。適切な衣類を与えず、入浴や清潔を保つためのケアをしない。体調が悪くなった子どもを医療機関にかからせない。普段からつらい、苦しい思いをして生活することになった子どもを、長きにわたって栄養不良をはじめとした体調、成長の不良にさらすこととなります。

また、子どもを無視して家に閉じ込める。家に残して長時間の外出をする。車の中などに放置する。そんなことをすれば、心身ともに幼い子どもに危険が及びます。人格形成にも大きく影響します。得られるはずのものを失って、直接的な暴力という形でなくても心身が大きく傷ついているのがネグレクトされている子どもです。

■保育士や周囲の大人がネグレクトを疑うとき

保育園などの保育施設に通う子どもがネグレクトを受けている場合もあります。近年では、決して珍しいことではありません。保育士として子どもと接している方でも、子どもの様子に違和感をおぼえて「虐待では?」あるいは「ネグレクトでは?」と疑うこともあります。また、保育者でなくとも普通に生活する中でも例えば道路や公園、ショッピングセンターといった場所で子どもが「夜遅くに」「1人で」いるなどの様子に「おかしい」と思う大人の方は増えていると思います。

保育者は子どもの生活の一部をケアしていますから、同じ衣服、汚れた衣服を着ているなどの異変には、すぐに気付きます。食べ物に対して強く執着するなど、食事が十分でない様子などに気付く機会も多くあります。ネグレクトは「無視」なので、ネグレクトを受けている子ども自身、人とかかわることができず、問題行動がある場合も多いのです。大人に甘えたり、子ども同士で仲良く遊んだりということができません。心身の発達、言葉などの知的な発達が遅れることもあります。

■ネグレクトを通報、通告

子どもが放置されている、とネグレクトに気付いたら、児童虐待の専門機関である児童相談所に通報することができます。2015年7月から児童相談所共通ダイヤル「189」の全国的運用が開始しました。全国共通、3けたの番号で対応するようになり、通報件数が増加したことが児童虐待事件の検挙数増加にもつながっています。保育者が保育園などでの子どもの様子でネグレクトに気付いたら、まずはその子のことをよく見て、おかしいと思わることを記録するなどしておきます。

上司や同僚、施設長(園長)などと一緒に子どもを見守り、児童相談所や自治体の担当部署に通告する場合の情報をまとめておくとよいでしょう。子ども自身に話を聞く、ネグレクトをしているのが疑われる保護者と話をしてみる、という対策もあります。子どもを問い詰めるようなことや保護者を責めるようなことはせず、落ち着いた状況で少しずつ丁寧に話を引き出す態度が大事です。子ども自身が告白してくれたら、それをもとに通報、通告につなげることも可能です。

保護者や養育者との話の中でネグレクトが明らかになる場合は、子育てに悩みがあったり、子育てが困難となるようなさまざまな事情を抱えていたりする場合もあります。保育者側が「相談を受ける」ことでネグレクトを防げる場合もあるので、慎重に話をすることが求められます。相談で解決しない場合には、やはり児童相談所や自治体等の関与が必要となってきます。

■何よりも優先されるべきなのは子どもの安全と健やかな成長

保育者や第三者としてネグレクトを疑った場合、様子がおかしいことに気付いても「もしかしたら勘違いかもしれない」「判断が間違っていたら」と不安に思い、対応に迷うこともあると思います。人として、そのような不安があることは当然ですが、何よりも大事なのは子どもの安全です。

命の危険にさらされている場合さえある、ネグレクトされる子ども達。健やかに成長し人生を楽しむ権利を奪われているかもしれない子どもに、気付いた人が手を差し伸べることができるのなら、その道を選びたいと思う人が増えることを筆者は希望します。

ネグレクトをする側の保護者や養育者も、苦しんだり心を病んだりしていることも多くあります。子どもをネグレクトから守り、救いたい。子どもを育てる側の悩みや苦しみも軽減し、救いたい。そんな気持ちを誰もが持っている社会、ネグレクトをはじめとした児童虐待のない社会に近づけていきたいという願いを、多くの人が持ってくれたらと思います。

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