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保育士は有給休暇を取れる?仕組みを知って申請してみよう|保育士求人募集なら保育ぷらす
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保育士は有給休暇を取れる?仕組みを知って申請してみよう
今回のポイント
有給休暇は労働基準法で認められた労働者の権利!
保育士が有給を取得するためには工夫が必要
有給を取得しやすい園を確認してから転職しよう!
目次
そもそも、保育士は有給を取得できているの?
保育士は有給が取得しにくいなどと言われることがありますが、実際はどうなのでしょうか。
まずは、一般的な保育士がどれくらい有給を取得しているのか、全国保育協議会の実態調査を例に見ていきましょう。調査では、正規職員の有給の平均取得日数を、保育園の形態ごとに「公設公営」「公設民営」「民設民営」の3つに分類し、日数別取得人員の割合を算出しています。
全体の結果は以下の通りです。
・2日以内 | 2.90% |
・3~6日 | 31.30% |
・7~9日 | 28.80% |
・10~15日 | 25.30% |
・16~20日 | 6.80% |
・21日以上 | 1.40% |
もっとも多いゾーンは「3~6日」です。年次有給休暇が最大で20日付与されることを考えると、決して多い取得数とは言えないかもしれません。
しかし、10日以上取得できている人の割合も全体の30%以上あります。
さらに、特筆すべきは、以下の民設民営保育園における平均取得日数です。
2日以内 | 2.6% |
3~6日 | 23.9% |
7~9日 | 27.2% |
10~15日 | 30.7% |
16~20日 | 9.6% |
21日以上 | 1.9% |
では、「10~15日」の有給取得が多いのか少ないのか、厚生労働省が発表した「就労条件総合調査の概況」を確認します。もっとも割合が多いゾーンは「10~15日」となっており、有給休暇を年間10日以上取得できている人は全体で40%以上にのぼっています。
全産業の労働者1人あたりの平均取得日数は「9日」となっており、男性が8.7日、女性が9.6日です。
実は、保育士の有給取得日数は、他産業と比較しても、それなりに高い数値となっています。
行事などの有給を取りづらい時期を考慮しながら、計画的に消化する工夫が必要ですが、有給が取れないわけではありません。
有給を取りづらい風潮があるのも事実
一方で、有給取得状況は、園や人によって大きく異なることもまた事実です。
有給が取りづらい園があったり、人によって取りづらい環境下に置かれていたりします。
具体的には、行事の多さに忙殺され有給が取得できないケースがよく見られます。
保育園ではさまざまな行事があり、1つの行事が終わったら今度は別の行事と、次から次へと作業が生じます。
「行事がひと段落してから有給を取得しよう」と思っても、取得のタイミングが難しいと言えるでしょう。
また、園の「暗黙のルール」に苦しむ保育士もいます。
本来、有給は労働者の自由な目的で使用して良い制度ですが、園によっては「体調不良でしか有給を取得できない」という風潮が存在します。
ひどい場合は、体調不良のときですら有給を取得できず、つらい思いをしている保育士もいるようです。
有給休暇ってどんなもの?
そもそも有給休暇について、法律上の仕組みをご存じでしょうか。有給の定義や条件、付与日数の規定などを知っておくと、れっきとした権利として堂々と有給を申請できるようになるはずです。
有給休暇の定義
有給休暇は、正式名称を「年次有給休暇」といいます。労働基準法第39条で規定された労働者の権利であり、行使することで賃金が支払われる休暇を取得することができます。
よく、「保育園が有給を与えてくれない」という声を聞きますが、有給は事業者が労働者に与えるものではありません。
労働者が持つ権利として、労働者側が当然に請求できる性質を持っているのです。
にもかかわらず、厚生労働省によれば、日本の有給消化率は48.7%です。これは、世界的に見てもかなり低い割合です。
内閣府の調査では、ブラジル、フランスの有休取得率は100%、日本、韓国に次いで取得率の低いインドでさえも、70%を優に超す取得率であることが分かっています。
有給休暇が付与される条件
有給は積極的に行使すべき権利ではあるものの、労働者であればいつ誰もが取得できるわけではありません。労働基準法では、有給休暇の付与条件を定めています。
まずは、事業主が労働者を雇用した日から6ヶ月が経過していることです。たとえば4月1日入社の労働者であれば、10月1日から有給が取得できることになります。次に、全労働日の8割以上を出勤していることが必要です。
ここで言う全労働日とは、あらかじめ労働義務を課されている日のことを指します。
たとえば、使用者の責に帰すべき理由によって休業となった日や休日労働した日は、そもそも労働義務がない日なので、全労働日には含まれません。また、産休や育休、業務上の負傷・疾病等による療養のために休業した日などは、出勤率の算定において、出勤したものとみなされます。
有給休暇の取得の規定
有給休暇は、法律上、さまざまな規定が存在します。ここからは、有給の規定について触れていきます。前述した通り、有給の取得は労働者の権利ですから、特別な事情がない限り、事業主は有給取得を拒むことができません。
では、「特別な事情」とはどんなことでしょうか。
①計画的付与
1つには、有給の付与日数のうち、5日を超える分については、事業主が労働者に対し、有給を計画的に付与できる規定があります。これを「計画的付与制度」と呼びます。
15日の付与がある場合を例にとると、付与日のうち5日は労働者が自由に取得し、残りの10日を事業主が計画的に取得させることができる制度となります。なお、計画的付与には労使協定の締結が必要ですから、労使協定が無い場合には、原則として、付与日数のすべてを労働者が自由に取得できます。
②事業主の時季変更権
次に、事業主には有給の「時季変更権」が認められています。
これは、労働者が指定した日に有給を取得させることで、事業の正常な運営が妨げられるときに限り、事業者が有給日を変更できる権利のことです。
「事業の正常な運営が妨げられるとき」とは、慢性的な人手不足や日常的に業務が多忙であることでは足りません。事業の内容や業務の繁閑、他労働者との調整など、さまざまな事情を総合的に判断する必要があるとされています。
さらに、事業主は単に有給取得を拒むだけでなく、別の日に有給を取得させなければなりません。
有給休暇の日数
有給休暇の付与日数を確認します。労働基準法では、雇用から6ヶ月を超えた労働者に対し、10日間の有給付与を規定しています。
以下は、勤続年数ごとの有給付与日数です。
6ヶ月 | 10日 |
1年6ヶ月 | 11日 |
2年6ヶ月 | 12日 |
3年6ヶ月 | 14日 |
4年6ヶ月 | 16日 |
5年6ヶ月 | 18日 |
6年6ヶ月超 | 20日 |
6年6ヶ月超勤務している場合は、最長で20日となります。たとえば10年勤務した労働者でも、法律上は年に20日の付与があれば良いことになります。
有給の付与自体は、正社員やアルバイトなどの雇用形態によって変わるものではありません。アルバイトやパートでも要件を満たせば付与され、週や年間の労働日数に応じて、日数が調整されることになります。
「パートだから有給はないだろう」と思っていた人も、労働日数によっては有給が認められると覚えておきましょう。また、有給の取得は原則1日単位ですが、就業規則や事業主との合意により、半日単位での有給取得も可能です。
有給の時効は2年ですから、2年間取得しなかった分は消滅してしまいます。半日単位で消化できるのであれば、上手に活用し、早めに、かつ計画的に取得したいものです。
働き方改革案
平成30年7月、働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案が公布されました。
保育士の有給に関しては、以下の労働基準法改正点を覚えておきたいところです。
「使用者は、10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、5日について、毎年、時季を指定して与えなければならない」
これは、ごく簡単に言えば、労働者に対し、年間で5日以上の有給を取らせることを事業主に義務づけたものです。これまで有給が取得しにくかった人でも、最低5日は有給が取得できることになり、日本の有休取得率の向上が期待されています。
なお、平成31年4月から施行となりますので、これから転職を考えている保育士にとっては、有給取得への不安が幾分か改善されるのではないでしょうか。
有給取得ができないことによる影響
有給がなかなか取得できない保育士は、有給が取得できないことの影響を考えてみる必要があります。
そもそも有給とは、所定休日以外に休暇を取得することで、労働者が心身ともにリフレッシュすることが目的の制度です。
昨今はワークライフバランスの重要性が叫ばれていることから、有給取得が大きな役割を担うものとして注目されています。
保育士は、土曜保育があったり、祝日が運営日だったりして、所定休日自体が少ない傾向にあります。
そのうえ、園ではやりきれなかった作業を自宅に持ち帰るなどし、実質的な休暇がさらに少なくなります。有給取得ができないことで、保育士はほとんど休まず働かなければならなくなってしまうのです。
さらに、保育業界で問題となっている保育士不足も、有給が取得できないことが影響しています。
有給が取得できなければ疲労が蓄積され、精神的にもストレスが溜まります。自身の家庭との折り合いがつかないケースもあるでしょう。
その結果、うつになって退職を余儀なくされたり、職種変更を希望する保育士が増えてしまいます。
残された保育士の負担が増えることになり、職場環境が悪くなって退職者が相次ぐなど、まさに悪循環です。
有給休暇を取得しやすくするには?
有給の取得しやすさは園の方針によって変わってしまう現実がありますが、保育士本人の工夫で取得しやすくすることは可能です。
具体的には、どのように工夫していけば良いのでしょうか?
年度末・年度始めを避ける
まずは、取得時期を配慮することが大切です。特別な事情がない限りは、年度末や年度始めを避けるようにしましょう。
いくら自由に有給を取得できるからといって、職場へ全く配慮しない申請を続けていれば、スムーズに取得できるはずの有給も、園から良い顔をされなくなってしまいます。
年度替わりは、卒園・入園式の準備があり、保育園は非常に忙しく、あわただしい時期になります。
年度末の3月に退職者が集中するため、引き継ぎなどで人手が不足しやすい時期でもあります。年度始めには新任の保育士が入ってきますが、指導や教育で人手がとられることになるでしょう。
これらを考慮し、年度末や年度始めを避けた時期に有給を申請することで、スムーズな有給取得につながりやすくなります。
長期休暇の時に有給申請をする
世間的に長期休暇にあたる時期に有給を申請することも一つの方法です。
たとえば、お盆やお正月は、一般企業が長期休暇に入っていることが多く、保護者も休みになります。
そのため、保護者自身が子供と一緒にいることができ、保育園に預ける必要がなくなります。結果的に保育園も閑散期にあたりますので、有給が比較的取得しやすい時期となります。
また、保育園自体の夏季休暇や年末年始休暇が独自に設定されている場合もあります。
他の保育士なども順番で休むことが多いため、「皆が働いているから有給申請しにくい」と思う必要がありません。職場の雰囲気として取得しやすいため、このときにしっかり休んでおくことも大切です。
保育士が有給取得しやすい園・難しい園を見分けよう!
保育士の転職において、有給が取得しやすい園か、取得が難しい園かは重要な問題です。当然ながら、有給が取得しやすい園の方が、働きやすい環境だと言えるでしょう。
ここでは、有給の取得しやすさを見分ける方法を紹介します。
有給休暇の計画的付与がされていない
有給の計画的付与がされていない園は、有給取得が難しくなる可能性があります。計画的付与は、園の有給取得率を向上させる目的で導入されます。
たとえば、保育士が一斉に有給を取得してしまえば、園としても運営に支障をきたし、困ることでしょう。
そのため、有給付与日数のうち5日を超える分を指定し、忙しくない時期に各保育士の有給取得が分散するように工夫することがあります。
計画的付与をされている園は、言い換えれば、有給取得率向上を目指している、有給が取得しやすい園ということになります。
計画的付与の有無については、求人要綱に書かれていることもありますし、職場見学や面接の際に質問することもできます。
保育士の人数配置が多い園を選択する
保育園は、保育サービスの質を保つ観点から、国が「児童福祉施設最低基準」を定めています。保育士一人あたりで園児を見ることのできる人数が決まっているのです。
具体的には、以下のように定められています。
保育士1人 | 0歳児3人まで |
保育士1人 | 1~2歳児6人 |
保育士1人 | 3歳児20人 |
保育士1人 | 4歳以上児30人 |
転職の際には、基準と比較し、保育士の人数配置が多い園を選ぶようにしましょう。人員配置にゆとりがあれば、その分有給も取得しやすくなるからです。しかし、これはあくまでも最低基準を定めたもので、配置人数がぎりぎりの場合、実際には人手が足りていない現状があります。
キャリアコンサルタントに問い合わせる
保育士の人員配置や、有給消化率に関する質問は、面接や職場見学の際に確認しにくい項目の一つです。あまり深く聞いてしまうと、採用に影響を及ぼすのではないかと不安を感じる人もいるでしょう。
その場合、キャリアコンサルタントに確認するのがオススメです。
保育士の転職支援をおこなっているキャリアコンサルタントであれば、保育園とのつながりや、過去の転職実績によって、園の内部情報に精通していることがあります。
あらかじめ園の希望を伝えておけば、条件にあった求人を探してくれるため、転職活動を効率良く進めることも可能です。面接の日程調整や給与交渉などさまざまなサービスを受けることもできますので、上手に活用してみましょう。
おわりに
取得しにくいと言われる保育士の有給ですが、労働基準法で守られた権利であり、国として有給取得率向上への取り組みもなされています。保育士を取り巻く有給の状況は良くなってきていると言えるでしょう。
法律上の仕組みを知ったうえで、職場の状況に配慮をしながら申請をすれば、有給休暇を取得しやすくなります。転職先を探す際は、有給取得がしやすい環境かどうかを事前に確認し、後悔のない転職を目指しましょう。
参考資料
厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/
内閣府 資料
http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/yasumikatawg/01/haifu_04.pdf#search=’%E4%B8%96%E7%95%8C%E3%81%AE%E6%9C%89%E7%B5%A6%E6%B6%88%E5%8C%96%E7%8E%87
香川労働局
https://jsite.mhlw.go.jp/kagawa-roudoukyoku/riyousha_mokuteki_menu/jigyounushi/jigyousya/2/2-1/2-1-2.html
独立行政法人 労働政策研究・研修機構
http://www.jil.go.jp/rodoqa/01_jikan/01-Q11.html
参議院HP
http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/196/meisai/m196080196063.htm
全国保育協議会
http://www.zenhokyo.gr.jp/cyousa/201706.pdf