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子どもの学習障害、その判断や対応はどうする?|保育士求人募集なら保育ぷらす
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子どもの学習障害、その判断や対応はどうする?
目次
■知能とは関係なく学習が困難
近年「発達障害」について、理解が進んできています。保育士や保育スタッフとして働く人にはお分かりだと思いますが、保育施設等でも発達障害の子どもへの配慮などが行われています。子どもの保護者が、子どもが成長していく過程で、ほかの子や一般的にいわれる子どもの発達と違うことがあると気付きいたとき……。以前と比較して、広く発達障害のことが知られているので、早期にその検査・診断に至るケースも増えています。発達障害と呼ばれる中にも、さまざまな分類があります。そのひとつに「学習障害」があります。発達障害の理解が進む中、学習障害は、多くの人にとって、まだあまり詳しく知られていません。「学習」の「障害」という言葉のイメージから、勉強ができない子ども、とか、知能の低い子ども、という誤った認識を持っている人もいます。学習障害は知能とは関係なく「読み」「書き」「計算」など、特定の分野で学習が困難な状態にあります。トム・クルーズさんなど著名人も対応に努力した学習障害についてお伝えしていきます。
■学習障害の定義と原因
学習障害は英語の「Learning Disability」を略した「LD」とも呼ばれます。日本では1999年に当時の文部省(現在の文部科学省)が「学習障害児に対する指導について(報告)」の中でLDを定義しています。以下に、その定義を引用します。
「学習障害とは、基本的には全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算する又は推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態を指すものである。学習障害は、その原因として、中枢神経系に何らかの機能障害があると推定されるが、視覚障害、聴覚障害、知的障害、情緒障害などの障害や、環境的な要因が直接の原因となるものではない」
知的発達に遅れがないことが明確にされ、原因は「中枢神経系」に何らかの障害があると「推定」されるにとどまっています。習得が困難な内容は「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」「推論する」ことなどです。これらのうち1つまたは複数の特定の能力以外には困難は見られません。原因に、子どもの育て方や環境は全く関係がありません。
■「読む」「書く」「計算する」などが習得しにくい
学習障害は「識字障害(ディスレクシア)」「書字障害(ディスグラフィア)」「計算障害(ディスカリキュア)」などに分類されます。識字障害では視聴覚の機能には障害がないにもかかわらず、文字を読むことに困難が伴います。文字を読もうとしてもかすれたりねじれたり、目に刺さってくるように見えるなどして、似たひらがなを区別して読むこと、カタカナを読むことなどが苦手、とされます。単語をひとまとまりとして認識するのではなく1文字ずつ読んだり、読みにくい部分を飛ばしてしまったりもします。文章のどこを読んでいるか途中で分からなくなることもあります。見え方、文字のとらえ方が異なっているということになります。書字障害では文字を書くこと、書き写すことが困難です。「鏡文字」になってしまったり、書こうとする文字の大きさや形が揃わなかったりします。算数障害では「繰り上げ、繰り下げ」のある計算に長い時間がかかったり、数の大小がわからなくなったりして、数字や計算が苦手になります。
■学習障害に気付かない、対応できないと子どもが傷付く
学習障害を持つ子どもは、学校などで、ほかの子ができていることができないとされ、それを、子ども自身の意欲や集中力がないからだ、と本人の責任にされてしまうということも起こり得ます。学習障害かどうかを判断し対策をする場合には、早期に気付くことも大切なのですが、幼児期には特徴が少ししか表れないので見つけるのも難しいといえます。就学前の環境では、読み書き計算をする機会が多い子どもばかりではありません。とはいえ、言葉を使うようになり、絵本を読んだり遊びの中で数を数えたりするようになるので、保護者が気付くこともあります。言葉や文字を扱うのを苦手そうにしている子どもの様子には、注意を払っておくほうがいいでしょう。小学校入学以降は、学習時に困難を伴うことが顕著になります。子どもが真面目に取り組んでいないわけではないのに学習の成果が伴わない場合があります。学習障害がある子に、一般的な学習で読み書き計算が身に付かない、といって叱りつけるなどするのは意味がありませんし、本人の心も傷付きます。「なぜできないのか」といわれても、それを知りたいのは子ども本人です。学校や専門機関に相談するなどして、対策をとる必要があります。
■学習障害の相談や診断
子どもの学習に、ほかの子との著しい差や困難があると思ったら、まずは学習障害以外の発達障害がないかどうかも確認したほうがいいと思います。小学校の担任のほか、特別支援担当や養護教諭が専門機関への橋渡しをする場合も多くあります。検査や診断のため自治体の発達障害支援センターや教育相談所などの機関に出向く場合や医療機関での受診もあります。結果として学習障害がある、ということになったら、対策としては「子ども個人に合う学習方法を工夫する」ことになります。療育機関や民間のサポート施設に通ってトレーニングをする場合もあります。
■学習障害のある子ども、個々に合わせた学習方法
学習障害は「治る」ということはありません。個人の特性として、生涯にわたって折り合いを付けていくものとなります。学習障害がなくなることはありませんが、工夫することで「改善」します。学習障害があると「覚えられない」「理解できない」のではなく、覚えたり理解したりするための方法として、一般的なものよりも本人に合うものを必要とするのです。その特性に合った方法であれば、覚えること、理解することができます。文字を読むのが困難であれば、絵や図形を使ってみるとか、本人が絵よりも音で覚えるのが得意なら、音声を使ってみるとか。文字を書くのが苦手なら、ノートのます目や筆記用具を、本人が書きやすいものにするなど……。個別の「やりやすさ」に合わせた工夫で、学習の効果をあげることが可能です。近年ではタブレット端末が学習障害を持つ人のために有効に活用されています。録音・録画や撮影が手軽にできることで、苦手なところをカバーできるのです。学校など教育現場でも個別の対応はある程度可能かもしれませんが、学校などに任せきりではなく家庭でも対応・工夫をすることが欠かせません。公的なサポートや社会においての啓発も必要なことです。
■学習障害で責められることがあってはならない
学習障害を理解する人は、まだまだ少ない、という現実もあります。学校の授業では教科書を読み、先生の板書を書き写し、計算をするという学習方法が「当たり前」です。それらが困難だから、ということで周囲(級友、ときに教師、そして保護者)に責められ、心ない扱いをされることもあります。学習障害は「怠けている」のでも「できない」のでもありません。自分に合った方法で成功する人も多くいます。ハリウッドスターのトム・クルーズさんは学習障害を持つことを公表している人の中では代表的な存在です。長年、映画の台本を読むことが難しく、セリフは人に読んでもらって録音し、耳で聞くことによって覚えていたそうです。困難があっても、それに対応する努力があったからこそ、俳優として多くの人を魅了してきたのです。
■学習障害は「人生を不利に」はしない
世界的な成功を収めている映画監督スティーブン・スピルバーグさんも学習障害を明らかにしています。スピルバーグさんは60歳前後で初めて学習障害と診断され、子どもの頃に読み書きが苦手なことでいじめを受けるなどした経験について「謎が解けた」と感じたそうです。スピルバーグさんは学習障害について、思っているより一般的なものであり、対処法もあるので、人生を不利にするものではないという見解を述べています。日本のタレントであるミッツ・マングローブさんも自ら学習障害であると明らかにしています。ミュージカル出演の際にセリフを覚えるのが困難で、文字ではなく「絵」「音」に結びつけるという方法をとるそうです。学生のときの教科書でも絵や線を書き加えて「自分用の絵」を作って覚えたそうです。ミッツさんは一般に「高学歴」とされる慶應義塾大学を卒業していて、鋭いコメントなどで知的なイメージでも知られています。学習障害と知能、そして勉強のできる・できないは関係がない、ということがわかります。
■学習障害とともに歩む
著名な人ばかりではありません。誰でも学習障害と「上手く付き合って」いけば、困難は克服できます。学習障害を持つ人が、大人になって仕事や生活において、その特性から「困る」ことは避けたいものです。例えば読み書きが苦手なことで「仕事の覚えがよくない」といったことにならないように。学習障害があっても、自ら対策の方法を知っておくことにより、自分なりの方法・工夫で乗り切っていくことが可能になります。また、自分の特性を熟知していれば、苦手な分野ではなく得意な分野を選ぶこともできます。学習障害と、ともに歩んでいこうというくらいの気持ちで取り組むと自信が持てるのであろうと思います。