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保育園の運営者は親?フランスの「親保育所」に迫る!

フランスの親保育
フランスには「親保育所」と呼ばれる施設があります。「親保育所」とは名前の通り、親が運営する保育所のこと。今回は、そんなフランスの親保育所についてくわしくご紹介します。

親保育所ってどんな施設?

親保育所といっても、親が直接子どもの世話をするというわけではありません。親の立ち位置は保育士ではなく、運営者なんです。これから、親保育所の運営に関して説明していきます。

親保育所の活動は?

子どもを預けている親自身が専門職員を雇用して、その専門家とともに施設内で保育を行っています。例を挙げると、保育の専門家に当たるのは保育士になりますね。ですから、親は保育士を雇って、施設の中で子どもの世話をしてもらいます。他にも給食を作るのに栄養士を雇うなど、子どものためにしてあげたいと考えたことに適した人材が配置されます。

一日の基本的なスケジュールは、他の保育所や幼稚園と変わりません。登校→自由遊び→昼ごはん→昼寝→帰宅といった形をとります。しかし、自由遊びや昼ごはんに何を食べるかなどの具体的な内容は、親の話し合いによって決められます。

運営資金はどこから出るの?

親保育所は、利用している親の保育料に加えて、自治体から交付される補助金で運営されています。こうして自治体から補助金を受け取ることができるのは、親保育所と協力関係にある「家族手当金庫(CAF)」と自治体が、子ども支援に関する公的な契約を結んでいるという経緯からです。

親は何をしているの?

親は保育士と連携して保育所の運営をします。といっても、決して保育園方針を命令してふんぞり返っているわけではありませんよ。

親にはそれぞれ役職や役割が与えられ、代表や財務、広報といったポストから衛生、物品の管理などを、すべての家庭が分担することになるのです。

例えば、保育士を雇うのも人事担当の家庭が行ったり、園の飾り付けや催し物の宣伝の仕事をする家庭があったりします。さらに、各家庭には週に保育当番が割り当てられます。朝は保育所の備品チェックやおもちゃの配置、掃除、お昼ごはんのための食材の買い出しなどを行います。お昼ごはんが終わったら、食器の片付けや洗濯などやることはたくさんです。

雑務を手伝うことで保育士は保育に専念できますし、親も保育に参加することで保育所での普段の子どもの様子を知ることができます。こうした保育参加は、保育所の現状理解や新たな課題発見に役立っているのです。

そして、一番重要な仕事は定期的に開かれる会議への参加です。会議の種類にもよりますが、全体会議では全員の親が参加して運営を話し合います。この会議によって、今後の保育方針が決められるので、議論も白熱したものになります。

きっかけは学生運動、親保育所はなぜできたのか?

フランスの親保育

そもそも親保育所はなぜ始められたのでしょうか?これから、親保育所がつくられた経緯を解説していきます。

親保育所は1960年代に起こった学生運動の中で、保育思想の変化が起こったことから始まります。

運動の中で自由や自治が叫ばれ、保育の現場でも子どもを保育施設に預けるだけではなく、親も積極的に保育に関わる機会を得ようという考えが広がっていきました。それに加えて、保育所不足という深刻な課題もあり、この現状を打破するために「親保育所」が創設されたのです。

現在では、親保育所は、日本のNPO法人に相当するフランスの市民団体として位置づけられています。また、政府からも保育所施設として承認を受け、フランスで一般的に受け入れられている保育施設となっています。

普通の保育園と何が違うの?親保育所のメリット・デメリット

フランスでは、公的な保育所では実践が難しい保育を取り入れていける点に魅力を感じ、積極的に子どもを親保育所に預ける家庭も少なくありません。

しかし、親保育所ならではの欠点が生じることも事実です。親保育所を利用することのメリット・デメリットを見ていきましょう。

メリット

多様なニーズに応えることができる

従来の集団保育とは異なり、親保育所では一人一人の意見を反映させることができます。「保育方針に納得できない」などと思っても親保育所なら解決も可能です。また、子どもに発達障害がある場合などでも、親同士の距離が近いため理解が行き届きやすいというメリットもあります。

専門的な保育が可能

話し合いの結果によっては、美術館や博物館に見学に行ったり、プロの劇団を呼んだりと、多彩な活動をすることができます。また、親も保育に関する知識を得るために、専門家を呼ぶこともあります。こうして親が得た知識を子どもに還元することが可能です。

親と保育士が対等な関係を保てる

親が保育士を雇うと聞くと、雇用主と雇用者という上下関係ができてしまいそうですが、雇われた保育士は親にとっても保育の先生となるため、その関係は対等です。

会議の場でも保育士が参加して、ときには保育に関して間違った知識を指摘するなど、保育士の立場から意見を出し、親もそれに応えます。

連絡帳がいらない!

保育園の連絡帳、書くのが大変!と思うこともありますよね。連絡帳は、子どもの家庭の様子を保育園の先生に伝える手段として用いられています。

しかし、親保育所では常に親と保育士の話し合いで、保育が決められますから子どもの情報共有はバッチリ。連絡帳ではなく、お互いに面と向かって意見を交換することができます。

親同士がつながることができる

親同士の協力体制が築かれているので、孤立するのを防ぐことが可能です。育児で不安なことやわからないことがあったら、周囲にすぐ相談できる環境がつくられています。

保育料を抑えることができる

親も保育に参加することで、日々の雑務のために雇う人件費を抑えることができるんです。ですから、従来の保育所と比べて金銭的な負担が軽くなっている場合が多いです。

デメリット

運営負担がかかる

親保育所という施設ですから、当たり前ですが親が保育所に関わる部分は多くなります。やることが増えるので、仕事で手一杯な人は親保育所という選択は難しいでしょう。

また、運営の役割をもらってもそれがうまくいかない間は、苦しい思いをすることも多いです。

親同士の意見が対立することも…

「子どものために良い保育を!」という気持ちはみんな同じですが、そのアプローチはさまざま。ときには、意見がまとまらずに話し合いが長時間に及ぶことも。子どもの成長のために妥協はしたくないという思いは大切ですが、やっぱり気力や体力を使います。

「親保育所」はフランスの多様な保育のたまもの

先進国の中でもフランスは、出生率を順調に回復させている数少ない国です。この出生率回復の要因の一つと考えられているのが、フランスの多様な保育です。

では、なぜフランスでさまざまな保育が生まれるかというと、「子育ては社会で連携する」という認識が強く根付いているからなんです。親保育所も親と保育士が連携した保育の一つで、お互いが密接なコミュ二ケーションをとりながら、理想の保育を目指しています。

こうした誰か一人だけに保育を任せない在り方は、日本においても女性の社会進出や保育士の仕事を考えるきっかけになるかもしれません。

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