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アクスライン:現代の遊戯療法を確立した児童心理学者

バージニア・アクスラインという人物をご存じですか?20世紀に活躍した児童心理学者で、「子どもの自由と意思を尊重する」という現代の遊戯療法のスタイルを作り上げた女性です。
今回はアクスラインという人物や彼女の功績、そして遊戯療法というセラピーについてくわしく解説していきます。

そもそも、遊戯療法ってどんなもの?

さて、アクスラインについて紹介する前に、まずは遊戯療法がどういうものかについて、内容やその成り立ちをご紹介していきますね。

遊戯療法(プレイセラピー)とは

概ね3歳から11歳までの子どもを対象とした心理療法の一種で、「遊び」を軸としたセラピーです。世界初の児童分析家であるヘルミーネ・フーク=ヘルムートが、「子どもの精神分析には遊びが必要である」と提唱したことから始まりました。

◆遊戯療法の成り立ち ~児童分析から遊戯療法への発展~

児童分析は、心理学で有名なフロイトの娘であるアンナ・フロイトやオーストリアの児童分析家メラニー・クラインが、児童心理学に精神分析(注1)を持ち込んだことから発展を始めた分野です。

(注1) 精神分析…フロイトが提唱した、人間の無意識を表面化させてヒステリーなどの治療を目指す心理学

アンナ・フロイトは「遊びはセラピストとの関係性作りのためで、分析の下地にすぎない」と考えていましたが、メラニー・クラインは「遊びそのものが子どもの精神分析になる」と考えており、当時の児童分析学は複数の意見が対立する分野となっていました。

その後、複数の児童分析家のもと「遊び」の重要性が段階的にクローズアップされていきましたが、それを遊戯療法として確立したのが、アクスラインだったんです。

すべて子どもの自主性に委ねる!アクスラインの唱えた遊戯療法とは

では、アクスラインの提唱した遊戯療法とは、いったいどのようなものだったのでしょうか?

アクスラインの遊戯療法の基礎は、「子どもをコントロールせず、子ども自身の主体性を尊重する」こと。 “非指示的遊戯療法“とも呼ばれ、自主的に遊ばせることで子どもをリラックスさせ、子どもの無意識的な願望や不安を引き出すといったねらいを持っています。

先ほどご紹介したクラインの考えも、分析のヒントを遊びに見出した点では同じですが、アクスラインは遊びの動機や意味より、子どもを受容することで自己表現力を高め、心理的な問題の解決へと導くことを重要視したのです。

バージニア・アクスラインという人物

それでは、アクスラインという人物について改めてご紹介していきます。

バージニア・アクスライン(1911-1988)はアメリカの児童心理学者です。オハイオ州立大学とコロンビア大学で心理学を学び、臨床心理学者のカール・ロジャーズに師事した経験を活かして現代の遊戯療法を確立しました。遊戯療法という分野でも最も高く評価されている人物です。

また、アクスラインは遊戯療法の第一人者であるほか、すぐれた教員としての側面も持っており、ニューヨーク大学やコロンビア大学、シカゴ大学など数々の名門校で心理学を教えていたようです。

アクスラインの師匠!「世界一の心理療法家」カール・ロジャーズとは

アクスラインが遊戯療法を提唱した背景には、カール・ロジャーズという人物の存在が大きく関わっています。

カール・ロジャース(1902-1987)は、アメリカの臨床心理学者。現在では当たり前のものとなっている、面接内容の記録や内容の細かな考察、カウンセリング対象を「患者」ではなく「クライアント」と定めるなど、心理カウンセリングのスタンダードを作り上げた人物です。

1982年にはアメリカ心理学会より「もっとも影響力のある10人の心理療法家」の1位にも選ばれた、世界一の心理学者で、代表的な功績としては、「非指示的療法」(注2) の提唱などが有名です。

(注2)非指示的療法…肯定的関心、共感的理解、感情の反射といった事柄を重視した心理療法。来談者中心療法とも言われる。

アクスラインは、オハイオ州立大学の院生だった1940年代、当時教授として勤めていたロジャーズのもとで心理学を学んでいました。アクスラインはロジャーズに大きな影響を受けており、遊戯療法はそこで学んだ 「非指示的療法」をヒントに、作られていったようです。

現代の遊戯療法の主軸!アクスラインの8原則

アクスラインは、自身の遊戯療法を実行する際には、以下の8つの原則に沿って行うべきであるということを提起しています。

①    セラピストと子どもの間に、友好的な関係をつくる。 (ラポールの確立)

②    セラピストは、子どものありのままの姿を受け入れる。 (受容)

③    セラピストは、子どもが自由に自分を表現できるような環境を与える。 (許容的雰囲気)

④    セラピストは遊びの中で、子どもの気持ちを適切に言い換えて伝える。 (情緒的反射)

⑤    セラピストは、遊びの主体を常に子どもに置いて治療を行う。 (主体性の尊重)

⑥    セラピストは子どもを指導・統制せず、子どもの意向に従う。 (非指示的態度)

⑦    セラピストは治療の進行を焦らず、子どものペースに添い遂げる。 (プロセスの認識)

⑧    セラピストは、時に治療に必要な一定の制限を与える。 (制限)

 

この8原則に従って遊戯療法を続けていくと、子どもは自らの中にある問題を自力で乗り越えていけるようになると考えられているのです。

◆自由を尊重するのに、どうして“制限”するの?

さて、アクスラインの遊戯療法は、子どもの主体性に任せるものであることは解説しましたね。ですが、8つの原則の中には”制限“という項目があります。いったいなぜ、自由を尊重する遊戯療法に”制限“を設けるのでしょうか?

それは、子どもが時に暴力的な行動に走ったり、現実原則から外れてしまうことがあるからです。

といっても、子どものそういった行動自体を問題視している訳ではありません。“制限”は、あくまでも子どもの罪悪感や不安感を取り除くために実行されるのです。

遊戯療法にマイナスの感情を抱き、治療がストップしてしまうことを防ぐために、セラピストは“制限”をかける必要があるわけですね。

また、“制限”には子どもに関係性や責任を意識させたり、現実について認識させる、といった役割もあり、子どもの発達に即した治療を行うために実行されることもあるようです。

アクスラインの遊戯療法は、今や世界的なスタンダード

今回は遊戯療法におけるアクスラインの功績にスポットを当てていきましたが、いかがでしたか?

子どもにとって、生きることそのものである「遊び」という行為に着目し、現代のスタンダードとなるセラピーの形を作り上げたアクスラインは、遊戯療法はもちろん、児童心理学全体の発展に寄与した人物なのではないでしょうか。

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