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子どもの発達には”愛着”が重要!?ボウルビィの愛着理論について

愛着理論
「愛着」という言葉は、例えば「この場所に愛着がある」「愛着がわいてきた」といったように、日常生活でも比較的使うことの多い言葉です。
そんな「愛着」という心の動きに注目して、児童の精神分析を試みた学者が存在していることをご存知でしょうか?
今回は、イギリスの精神科医であるボウルビィが確立した “愛着理論”についてご説明します。育児や保育を行う方々には、ぜひ覚えておいて欲しい考え方です。

愛着って?

同じものをボロボロになるまで使い続けたり、小さい頃のぬいぐるみをずっと持っていたり…そんな時に「愛着がわいた」と感じる方もいるのではないでしょうか。

愛着とは「慣れ親しんだ物事に深く心を引かれ、離れがたく感じる」ことを言います。この場合、物や場所に対して愛着という言葉を使っていますが、人と人の間の心理的な絆に対しても愛着という言葉を使います。

心理学における愛着(attachment)とは、他人や動物などに対して築く特別な情緒的な結びつき、とくに幼児期までの子どもと親や保育者との間に形成される関係を中心とした情緒的な結びつきのことを言います。

生まれて間もない赤ちゃんがお母さんに抱っこしてもらったり、ミルクを飲ませてもらったりといったことを通して、赤ちゃんと保護者・保育者はお互いへの愛着をより一層深めていくのです。より密接な関係を築いていくことで、赤ちゃんは情緒豊かにのびのびと育っていくようになります。

愛着理論の生みの親、ジョン・ボウルビィ

このような人と人との親密さを愛着行動として理論づけたのがイギリスの精神科医であるジョン・ボウルビィです。ボウルビィは大学において心理学や医学を学んだのち、児童精神医学の研究者として研究を重ねます。その後、第二次世界大戦後に愛着理論の実証的研究を始め、“愛着理論”の概念を生み出すこととなったのです。

ボウルビィは愛着理論の中で、愛着行動の発達段階は4段階であると言っています。

第1段階 人物を特定しない働きかけ

この段階は生まれた時から8~12週頃まで続きます。ある特定の人物に対してではなく、無差別に周囲の人間に対して興味を持ち働きかける段階となっています。乳幼児が周囲の人間に対して笑いかけたり、泣いたり、手を伸ばしたりといったような行動が周囲の人間に影響して、乳児のそばにいる時間が長くなります。

第2段階 特定の人物(特に母親)に対する働きかけ

この段階は生後6カ月頃まで続き、人に対する親密な行動が特に母親に対して顕著になります。母親に対する見分けがつくようになっており、母親に対する分化した反応が見られますが、母親の不在に対して泣くという行動はまだ見られない段階でもあります。

第3段階 真の愛着形成

この段階になると、子どもが親とその他を区別する能力は確固たるものとなっていきます。逆に、見知らぬ人に対しては警戒したり不安を感じるようになったり、いわゆる人見知りが起きるようになる段階です。この段階は満2~3歳頃まで続きます。

第4段階  目標修正的な協調性の形成

母親などの特定の人物がいなくても、情緒的な安定を保てるようになる段階です。母親が考えていることや目的、行動などが洞察できるようになると、母子間に協調性という関係を発達させる基礎が形成されるようになります。この段階に達するのは早くても2歳、多くは3歳ぐらいとなっています。

発達段階において問題があるとその後の人格形成にも大きな影響を与えてしまう可能性があるため、愛着行動はとても重要であると言えます。
では、愛着行動には具体的にどのようなものがあるのか、次の項でご説明します。

愛着理論

愛着行動にはどのようなものがある?

愛着行動とは、ストレスがかかる状況下で乳幼児が母親などの特定の愛着関係を築いた相手に対して、親密さを求めるために行う行動です。これは、生後6か月頃から2歳頃まで活発に現れます。

愛着行動には、大きく分けて3種類のものがあります。

発信行動

発信行動は、愛着関係を築いた相手の注意や関心を引き、相手をしてもらおうとする行動です。

例えば、泣いたり、ぐずったり、微笑んだり、お母さんをジッとみつめたりするのが発信行動です。この愛着行動は、寝返りやハイハイを覚えて自力で移動できるようになるまでによく見られるものです。

接近行動

接近行動は、子どもが自ら愛着関係を築いた相手に近づき、気を引こうとする行動です。

例えば、愛着関係を築いた相手を後追いしたり、抱き着いたりするのが接近行動です。ハイハイや一人歩きを覚えて自力で移動できるようになると、接近行動が多く見られるようになります。

定位行動

定位行動は、愛着関係を築いた相手がどこにいるのかを確認する行動です。

例えば、お母さんの行動を目で追いかけたり、お母さんの声がした方を向いてお母さんを探すような仕草を見せたりするのが定位行動です。一見簡単そうに見えるこの定位行動ですが、視力や視野の向上や、声を分別する能力が必要であるなど、様々な能力を要します。

定位行動は、首がしっかりと座る時期の前後に見られます。

もしも愛着関係が形成されなかったらどうなるの?

最初に、子どもの発達にとって愛着形成はとても大切なものであるとご紹介しましたが、もし子どもの時に十分に愛着関係が形成されなかった場合、どうなってしまうのでしょうか。

子どもの発達の初期段階で、お母さん(もしくは世話をしてくれる人)と十分にコミュニケーションが取れず、絆を確立することができない状態をマターナル・デプリベーション(母性はく奪)と言います。

幼児期にマターナル・デプリベーションが起こった場合、その後成長していく段階において、他者との新たな愛着の形成が苦手になってしまうと言われています。それをボウルビィは、「唯一の人物に自己の愛着を向ける機会がなければ『人を愛せない性格』がつくられる」と著書の中で述べています。

マターナル・デプリベーションが起こっている場合の具体的な症状例としては、癇癪を起こす・怒りやすい・乱暴・わがまま・いじめをする・おねしょ・爪を噛むといったことが見られます。また、自尊心が低く、相手の立場に立って考えることなども苦手であるというのも特徴の1つです。

近年では虐待や育児放棄も社会的な問題となっており、子どもの健全な発達に大きな影響を与えていると言われています。親からの愛情不足の状態が長期間続くと、子どもの心だけではなく身体にも様々な問題が現れるようになり、最悪の場合非行や自傷行為などにも繋がる可能性もあるためとても深刻です。

何らかの理由で、親元で生活することが出来ずに孤児院で育つ子どもに関する研究の中でも、孤児院における死亡率の高さと発達の遅れが指摘されています。これは、別に孤児院に問題があるというわけではなく、幼いころに親を中心とする人間と十分な愛着関係を形成することができない環境が問題であるということが段々と明らかになってきています。

まとめ

子どもがすくすくと健康に成長していくために、愛着を形成することは非常に重要です。子どもの様子を見ると、十分に愛情を注がれて愛着関係が形成されているかどうかが分かることも多いので注意して観察することも重要です。

中には、どのように子どもと愛情を形成していっていいのか分からず悩んでしまうお母さんもいるかもしれません。
しかし、そのような時は一人で悩まずに周りの人間に相談してみることをおすすめします。保育や育児について、電話相談などを受けている機関もあるので活用してみましょう。
今回ご紹介した愛着理論を踏まえて、親の立場や保育者の立場から子どもとの付き合い方を見つめ直してみるのもよいでしょう。

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