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保育の現場にも役に立つ。音楽療法ってどんなもの?
目次
好きな音楽を聴いていると心が癒されたり、元気になったりするのを感じたことはありませんか。音楽の持つ力は強く、人の心に大きく作用すると考えられており、この効果をリハビリテーションの現場に応用したものを「音楽療法」と呼びます。
近年は日本でも音楽の持つ効能が見直され、精神医療の現場や児童教育、発達支援、介護予防など、実にさまざまな場面で音楽療法が取り入れられることが増えてきました。ニーズが高まっている音楽療法についてご紹介します。
音楽療法ってどんなもの?
音楽療法とは、音楽を聴いたり、演奏をしたりすることで得られるはたらきを活用したリハビリテーションのこと。対象となる人が音楽に触れることで、心身の機能回復や問題機能の改善などが期待できると考えられています。
また、リハビリテーションといっても、ケガをしている人にほどこすリハビリテーションとは異なり、治療だけに活用されるのではなく、生活の質を向上することにも役立てられています。
音楽療法って何をするの?
音楽療法は、言葉のとおり音楽を通じて体や心を癒すというもの。好きな音楽を聴く、タンバリンなどをたたいてリズムにのる、歌に合わせて体を動かす、歌をうたう…こうした音楽活動を通じて、脳の活性化をはかっていきます。音楽療法に演奏レベルなどは関係なく、上手に演奏できたり、歌えるようになったりする必要はありません。音楽に楽しく取り組むことで、対象者の心身にいい影響を与えていくことが大切です。
音楽療法の効果は?
音楽療法には、精神的な不安や肉体的な痛みの軽減、リラクゼーション効果など、実にさまざまな効果が挙げられます。
精神医療の現場では、生きにくさを感じていたり、うまく感情がコントロールできずに悩んでいる人が音楽療法に取り組むことで、ストレスが和らいだり、よろこびを感じられるようになることが期待されています。表情が乏しくなってしまっている人に笑顔がこぼれる…なんてこともあるようです。
子どもたちに行う音楽療法では、音楽を通して自分を表現したり、音楽の練習を通じて小さな「できた」を積み重ねたりすることで、表現する楽しさを知り、自信をつけていくきっかけになります。そのほか、発達に障がいがあり、物事に集中するのが苦手な子が音楽に取り組むことで、普段の学習に必要な集中力や認知力を身に着けられると期待されているため、発達支援の現場でも活用されています。
また近年では、介護や介護予防の現場で音楽療法が活用されることが増えてきています。高齢者が昔よく聴いていた音楽を聴いたり、歌ったりすることで、自分らしさを取り戻す。年齢とともに感情表現が乏しくなってきてしまった人でも、音楽に触れることで笑顔がこぼれるようになる…。また、認知症予防として、歌いながら拍子をとる、楽器を鳴らすなど、ふたつの動作を同時にすることが有効だとされています。
音楽に触れることで自律神経が穏やかになり、ストレスホルモンが減少するなど、音楽療法の効果は科学的にも立証されています。
音楽療法の専門家「音楽療法士」になるには
音楽療法士とは、対象者に音楽療法をほどこすプロフェッショナルのこと。主に介護や福祉、医療の現場で、心や体に不調をきたしている人に対して、その人に合わせた音楽プログラムを組み、歌をうたったり、音楽を聴かせたり…というリハビリテーションを行う仕事です。とはいえ、日本では、まだまだ普及しているとはいいがたい音楽療法士。介護士や看護師がプラスアルファの資格として取得する例が多く、音楽療法士単独の資格で活躍している人は少ないのが実情です。
音楽療法士の資格を取得するには
音楽療法士の資格は、日本音楽療法学会が認定している民間資格。音楽療法士の資格を取得するには、日本音楽療法学会が行っている資格審査(筆記・面接)に合格しなければなりません。だれでも受験できるわけではなく、次のいずれかの条件を満たした人しか受験することができません。
①認定校を卒業する
高等学校卒業後、音楽療法士養成コースを持つ指定の大学や短期大学、専門学校へ入学。卒業見込み時に、受験資格を取得。
②経験を積み、資格試験受験制度に参加する
大学、短大、高等専門学校、専門学校(2年以上)のいずれかを卒業後、3年以上の臨床経験を得て、音楽試験(ピアノの実技試験と音楽理論)に合格する。その後、日本音楽療法学会が主催する講習会を受講し単位を取得、臨床経験などすべての条件を満たすことで受験資格を取得。
上記の通り、認定校を卒業するのが最短で取得できるコースです。在職中などを理由に認定校での履修が難しい人を対象に、受験資格を得るための必修講習会という講習会がひらかれていますが、講習会は二年半にもわたりますから、短期間で容易に取得できる資格ではないことがよくわかると思います。また、必修講習会は常にひらかれているわけではなく、次回の受講募集は2018年が予定されています。
「保育音楽療法士」「こども音楽療法士」の資格も
音楽療法士の資格とは別に、一般財団法人全国大学実務教育協会が認定している「保育音楽療法士」「こども音楽療法士」という資格もあります。
保育音楽療法士は、心とからだ、そして音楽の関係について学び、楽器の演奏と演奏指導方法を習得し、音楽をつうじて障がいを持つ子どもたちの心身の発達と回復をサポートするという役割を持つ専門職です。
こども音楽療法士は、心身に障がいを抱えている子どもたちの音楽療育に携わるプロフェッショナルです。いずれも、全国大学実務教育協会に入会している四年生の大学・短期大学へ入学し、規定の科目・単位を履修、決められた単位数を取得することで名乗ることができます。
音楽療法士の活躍の場は
年々音楽療法のニーズは高まってきているとはいえ、音楽療法士の認知度はまだまだそう高いとは言えず、看護師や介護士、保育士といった現場に勤める人のプラスアルファの資格といった認識が強いといった実情があります。音楽療法士として単独で活躍している人は少ないのが現状ではあるものの、特に精神科や心療内科といった心のケアを中心に行う医療現場や、介護の現場、ホスピス(終末期病床)、子どもたちの発達支援…といったところでニーズが高い職業です。
超高齢化社会に直面している今、なるべく介護を受けることなく元気で過ごせるよう、国や自治体が総力をあげて介護予防活動の普及に取り組んでいます。地域の介護予防教室などでは、音楽療法士を招いて音楽を活用した介護予防教室がひらかれることも多く、今後は自治体などがクライアントとなるような仕事が増えていくのかもしれません。
音楽を通じて対象者の心に寄り添う音楽療法は、保育や幼児教育の現場にも生かせそうですね。とはいえ、音楽療法士の資格取得はけっして容易ではありませんので、音楽療法に興味を抱いた方は、まずは音楽療法がいったいどんなものなのか、どのようなことを学び、どのような場面で活かしていくのかを知るところからはじめるのがおすすめです。