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各自治体の待機児童対策~保育士確保のための待遇改善~
東京都の主な保育士確保・待遇改善のまとめ
近年、保育園に入りたくても入ることのできない待機児童の数が全国的に問題になっています。
中でも、日本の人口の約10%が集中する東京ではその問題は深刻です。日本全体的に見れば少子高齢化の影響で人口減少傾向が起こる中、東京をはじめとする首都圏の人口はなお増加しています。
待機児童問題の原因の一つとして、保育士不足があげられます。長時間労働、低賃金などの労働環境の悪さから、保育士資格を持っていながら保育士として働いていない「潜在保育士」と呼ばれる人も多数存在します。
いくら国や自治体がお金をねん出して保育施設を整備したところで、そこで働いてくれる保育士がいなければなんの意味もありません。
東京都の保育士の平均年収は328.2万円。この数字自体は全国平均を上回っているのですが、ほかの全業種平均との比較では全国ワースト2位の56%。つまり、東京は他の業種の給与との格差が大きいということです。さらに他の地域と比べて何かと物価の高い東京で住むには、全国平均(310万円)をちょっと上回るくらいの収入では生活は厳しいかと思います。
そこで各自治体は、様々な補助金制度を用意して保育士たちに自分の自治体で働いてくれるように促しています。
今回は、そんな東京都の各自治体が行っている保育士確保のための待遇改善策について紹介していきたいと思います。
世田谷区の家賃補助制度
東京の待機児童問題を語るうえでいい意味でも悪い意味でも外せないのは世田谷区でしょう。待機児童の数が東京都の自治体でワーストの1198人。2位の江戸川区397人を引き離してのダントツです。
そんな世田谷区ですが、待機児童問題解消のため保育士の待遇改善にも取り組んでいます。
まず、区内で働く保育士に対する家賃補助を行っています。最大8万2000円までの家賃が支給されるという制度。実は、この制度国と東京都が行っている「保育士住居支援制度」の一環として行われている施策です。
補助金のうち、50%が国、25%が都、12.5%が市区町村、そして残りの12.5%を事業所が負担するという形になっています。今では世田谷区だけではなく、東京都、神奈川県や千葉県の自治体でもこの制度を行っているところはありますが先陣を切ったのは世田谷区。
この制度の大きな目的は東京以外の地方から、東京で就職を目指している保育士たちの金銭的負担を軽減することです。そのため、単純な家賃だけではなく、礼金や管理費、更新料などの最初の入居にかかる費用などもこの制度の対象となっています。
杉並区の潜在保育士補助制度
杉並区もまた、待機児童問題解決に向け、保育士確保のための政策を積極的に打ち出している自治体の1つです。
東京23区の西部に位置し、城西地区と呼ばれる杉並区には住宅街が立ち並び、それに伴い多くの子育て世代が流入しています。
そんな杉並区が保育士確保のために目を付けたのは、保育士資格を持っていながら保育士として勤務していない「潜在保育士」と呼ばれる人たちです。
保育士として登録されている人の数と保育士として実際に勤務している人の数の差から導き出された潜在保育士の数(推計)およそ76万人(2015年のデータ)といわれています。
杉並区はそんな潜在保育士を呼び入れようと、3年以上保育士として勤務していない人を対象に、区内の保育施設に常勤職員として新規採用されると区内で使える5万円分の商品券が支給されるという独自の施策を行っています。
また、世田谷区などと同様に保育士住居支援制度も行っています。従来、上限が6万円でしたが平成29年より世田谷区などと同じ8万2千円に引き上げられることが決まっています。杉並区の家賃相場を考えると同じ金額でも世田谷区と比べ若干のお得になるのではないでしょうか。
足立区の保育士奨学金制度
多くの自治体が保育士確保のために住宅補助や給与アップのための補助金などの施策を行っています。そんな中独自の補助制度を導入しているのが足立区です。
足立区は区内の常勤保育士として勤務を始めてから3年未満の保育士を対象に、保育士資格取得のために借りた奨学金の返済を最大半額まで補助する制度を行っています。これは全国初の取り組みです。
これが、ほかの多くの自治体が行っている保育士住居支援制度と大きく違う点は、保育士本人が直接受給することができる点です。
住居支援制度で補助金を受け取るのはあくまでも事業所。この制度を使うか否かは事業所の判断にゆだねられます。ですから、住居支援制度を期待して就職したのに、その事業所が制度を利用しないといえばそれまでです。
一方、この奨学金支援制度は足立区内で働く保育士であれば直接申請し、直接受給できます。保育士個人が要件を満たせば受給できるという点で住居支援制度よりも若干確実といえるでしょう。
もちろん、住居支援制度も足立区にはあり8万2千円まで補助を受けることができます。足立区の家賃相場は世田谷区と比べて約2万円下がります。同じ8万2千円の補助でも住まいの選択肢は大きく広がるでしょう。
東京都の保育士勤続年数補助制度
さて、これまで各区の保育士確保のための施策を紹介してきましたが、肝心の東京都はどのような対策を打ち出しているのでしょうか。
まずは何度も紹介している「保育士住居支援制度」。これは国と都が実施し、2者で合わせて75%の費用を負担するという制度です。これによって、家賃相場の高い都心部の保育士不足の解消を目指します。
また東京都は保育士の給与に対する補助金を平成29年度よりほぼ倍増しました。従来、東京都は職責や勤続年数によって給与が上がる制度を導入している事業所を対象に保育士1人当たり2万3千円の補助を支給していましたが、これが4万4千円になります。都はこの制度の国の給与助成制度の拡充と合わせて、保育士の給与が幼稚園教諭の月給平均32万円になるように設定しました。
これはあくまでも、事業所に支給される金額ですので必ずしも月給が2万円ほど上がることは意味しませんが保育士の待遇を改善するという意味では大きな一歩といえるでしょう。
他にも保育士有資格者を増やすために、保育士試験の実施回数を年に2回に増やしたり、就学資金の貸し付けなど保育士の卵を育てるためにもお金を投じています。
東京都の小池知事は待機児童問題の解消に全力で取り組むことを表明しており、これからも新たな施策を発表することが予想されます。
最後に
東京23区は日本の人口が集中する地域。それだけに保育士不足の問題も深刻です。しかし、世間の注目を集め、保育士の待遇改善に向けた取り組みが多く行われている場所でもあります。
ここで紹介した待遇改善策はあくまでも国や自治体が行っているものだけです。よりいい人材を確保しようと、各事業所が民間レベルでも多くの待遇改善策を行っています。
東京には多くの事業所があるため、選択肢が豊富です。東京で保育士として働くというのも選択肢の一つに入れてみてはいかがでしょうか。