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横浜市の子育て政策「待機児童ゼロ」以降の取り組みと発展
目次
■自治体に求める「子育てのしやすさ」
子どもを育てる保護者は、子どもの成長を楽しむ忙しくも充実した日々を暮らしていることと思います。もちろん、困ったことや不安なこともあるでしょう。毎日の生活のちょっとしたことや、子どもや家族の生き方を左右する大事なことなど、さまざまなことで「もっと、子どものためにこうだったらいいのに」「もっと子育てしやすかったらいいのに」と思うこともありますよね。
だから、子育て家庭にとって、自分達の住むところが「子育てしやすい自治体」なのかどうかは大きな関心事です。子育てしやすいイメージがあり、子育てに力を入れているということで話題になる自治体の代表に横浜市があります。2013年に「待機児童ゼロ」達成を宣言したことで市の子育てしやすさにおける「価値」「ブランド力」のようなものを確立した感があります。そんな横浜市の、待機児童ゼロ宣言以降の子育て政策に注目し、解説します。
■3年で? 待機児童数ワーストワンからゼロに
2013年に横浜市が「待機児童がゼロになった」と発表した際には、そのわずか3年前、2010年に待機児童数が「全国ワーストワン」だった状態からの達成ということが大きく取り上げられました。2009年に就任し「保育所待機児童解消プロジェクト」を実行した林文子市長の手腕も讃えられました。2011年から実施された「保育コンシェルジュ」サービスは横浜市が行った効果的な施策の代表的なものです。
子どもを預けたい保護者のニーズを細かくくみ取り、最適の保育施設・保育サービスに「引き合わせる」仕組みとなっています。とはいえ、この3年の取り組みだけではなく、以前から「横浜保育室」という独自基準の認可外保育施設の整をしたり、保育所を新設し定員増をはかったりなどを実行してきたことも待機児童減少につながりました。子育てについての政策、施策にはスピードも大事ですが、段階的、長期的な取り組みが必要であることも確かです。
■横浜市の現在と将来に向けての子育て支援
2013年の「待機児童ゼロ」の翌年、2014年の横浜市の待機児童数は「20人」、その翌年2015年には「8人」、そして2016年には「7人」としています。さまざまな施策を継続しているにもかかわらず、また、低い水準に抑えられてはいるものの、常に「ゼロ」とはなりません。子育て家庭からの人気が高いからこそ、保育所等の利用申請者も増加の一途だからです。すでに「子育てがしやすい」というイメージがあるからこそ保育所の申し込みがますます増加していて、ほかにも新たな問題、継続して解決に臨まなければならない問題等も多数、存在します。
現在、そして将来に向けての横浜市の「子ども」「子育て」に関する政策は、どのように進められているのでしょうか。平成27年度(2015年4月~2016年3月)から平成31年度(2019年4月~2020年3月)までの5年間の事業計画として「横浜市子ども・子育て支援事業計画~子ども・みんなが主役! よこはまわくわくプラン~」が策定され、各事業が実施されています。
■幅広い保育ニーズに対応
横浜市が子ども・子育て支援事業として実施している中でも現代の子どもを取り巻く状況への対応として特徴的なものや独自性のあるものについて取り上げていきます。乳幼児期の子育てを支援する方針としては、質の高い保育・教育を提供し、学齢期まで切れ目なく支援すること、としています。
保育コンシェルジュによる個々に対応した保育サービスの紹介、保育所の整備を継続するとともに、幼保連携型認定こども園や小規模保育事業など地域型保育事業の整備を進めています。小規模保育事業は6人~19人を定員とする家庭に近い環境の保育で、横浜市の独自基準を用いて地域ごとの細かい対応をはかっています。
ほかに幼稚園での預かり保育や保育所、認定こども園、横浜保育室での一時保育、24時間対応の緊急一時保育など、幅広い保育ニーズに応える保育事業を展開しています。また「横浜子育てサポートシステム」という会員制・有償の活動があります。会員同士「預けたい」「預かる」の相互支援で子育てを通じた地域のつながり、人のつながりを作っています。
■保育の質を高め、子どもが育つ場の連携をはかる
保育については「人手不足」が深刻なのは横浜市も例外ではありません。人材の確保のため、保育士資格を持っていても保育に従事していない「潜在保育士」の復職支援面接会を実施しています。
保育従事者の定着のために、施設の経営側(保育関連業者)に対する住居(宿舎)の借り上げ支援等もあります。また「幼稚園教諭免許状」と「保育士資格」の両方を有する保育教諭育成支援も実施しています。保育の質を高めるため、保育士、幼稚園教諭、保育教諭の研修体制の整備や強化をしています。保育の「切れ目」のない支援ということについては、家庭と地域、保育所、幼稚園、認定こども園等が連携する、小学校へ上がる際にも円滑に子どもが適応できるようにする、などの目的があります。地域ぐるみの子育て、ということに関しては例えば「保護者の一日保育士体験」等も行われています。保護者の保育施設への理解が深まり保育者との連携が円滑になる、という効果を生んでいます。
■親子が周囲と交流できる環境、子育てをあたたかく見守る環境を作る
横浜市が子ども・子育て支援事業の計画を策定する際に市民に対して行った調査の結果、子どもと一緒に出かけたり遊んだりできる居場所へのニーズが高いとわかりました。各区に「地域子育て支援拠点」、空き店舗などを利用した「親と子のつどいの広場」などの利用推進のほか「ハマハグ」と呼ぶ子育て家庭応援も実施しています。市内のお店や施設で、妊娠中の女性や子育て中の人が利用する際に子育てに嬉しい優待があるというものです。登録した人に対して料金の割引や子ども用商品のサービスなどがあります。子どもや子どもを連れた人が外出先で遠慮してしまうことのないよう、困りごとを誰かに相談できるよう、地域が見守れるようにしていくということです。
■男性も女性も、仕事や子育て・家庭生活を両立させるために
横浜市の子ども・子育て支援では「ワーク・ライフ・バランス」も重視しています。市民への調査では、働く女性が増えた社会の背景とともに、子育てにおいて母親の負担が大きいということがわかりました。男性も女性も、子どもと豊かな時間を持てること、仕事と子育てを両立できることを目指しています。ワーク・ライフ・バランスの啓発のためセミナーや講演会なども実施しています。男女が共に働きやすく、性別にとらわれずに従業員の能力を活用している企業を表彰する「よこはまグッドバランス賞」の実施なども特徴的な事業です。
■さらに「子育てしやすい自治体」に
横浜市が計画に従い、多様な子ども・子育て支援を実行していくためには「PDCAサイクル」の確保が必要、ということも計画の中で述べられています。P=PLAN(計画)、D=DO(実行)、C=CHECK(点検)、A=ACT(改善)を繰り返し、確実に実施し結果を出していくことが不可欠です。待機児童ゼロで「横浜市なら」と期待を持たれていることもあり、今、そして未来の子ども・子育て支援においても注目される横浜市。期待に応え、ますます先進的で実行力のともなう「子育てしやすい自治体」として、ほかの自治体にとって見習いたい、真似したい存在であってほしいと思います。
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