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叱らないし褒めない!?アドラー心理学から見た保育とは
アドラー心理学とは
フロイト、ユングに続いて心理学の三大巨匠と称されることも多いアドラーですが、彼は「人の悩みはすべて対人関係が原因だ」という説を打ち出し、他人を変えようとするのではなく、自分を変えていくことでその悩みが解決できると考えました。他にも、「○○だから××できないというのは、自分が○○したくないから××を言い訳に使っただけだ」という劣等コンプレックスの話や、「自分たちの属している、より大きい共同体のためを思って行動できる感覚」について思考する共同体感覚の話など、心理学の中でも私たちと関わりのある身近な問題を題材としているのがアドラー心理学の特徴です。
叱らない・褒めない保育って?
さて、皆さんは子どもの片付けや勉強を急かすことはありますか?優しく言ってもやらなくて、最終的には「早くやりなさい!」「あとで後悔しても知らないよ!」と厳しく怒鳴りつけてしまう……なんてこともあるかもしれません。分かっているとは思いますが、言うことを聞かないからと感情のままに怒鳴るのはもちろんNG。怒られることへの反抗心・恐怖心や、大人への不信感に繋がるので良くありません。
とはいえ、子どもを過剰に褒めて甘やかすのも良いこととは限りませんよね。ご褒美がないと何もしない子や、確実に成功する場面でしかチャレンジしない子になってしまっては、大切な子どもの可能性を狭めることになってしまいます。それに、褒めるというのは相手を一方的に評価すること。つまり、親子という関係に評価をする側・される側という上下を生んでしまうことになるのです。では、保護者は子どもにどんな言葉をかければいいのでしょうか?
主体性を尊重する「勇気づけ」
アドラーは、自分の課題に立ち向かう力を「勇気」、その力を引き出す行動や言動を「勇気づけ」と定義しています。子どもを見守る保護者に必要なのは、子どもの勇気を引き出すための「勇気づけ」の言葉。「頑張っているね」「ありがとう」「助かったよ」とこちらの気持ちを伝えることで、自分は人の役に立っている、人に与えられるものがあるという意識が子どもに生まれ、進んで自発的な行動を取れるようになるんです。
ここで大切なのは、親子関係を上下ではなく横の関係としてとらえること。アドラーは、「怒りという感情は相手に言うことを聞かせるための出し入れ可能な道具で、わざと感情的になることで相手を支配しようとしているのだ」と考えました。つまり、子どもを支配しようとするのではなく、尊重して対等に接することでより良い親子関係が生まれるということですね。
自分は自分、人は人!「課題の分離」の考え方
アドラーは、「自分の事情と他人の事情は違うと理解すること」「人の課題に踏み込まないこと」の二つを意識することで、対人関係の悩みがなくなると考えました。これを、課題の分離といいます。
子どもの人生は子どものものであって、親のものではありませんよね。同じように、子どもの課題(悩み、やらなくてはいけないことなど)は子供のものであり、保護者が代わりに解決したり、「こうすればいいのに」と口を挟んだりするべきではありません。
例えば、「何度言っても子どもが勉強をしようとしない、学校の勉強についていけなくなったら困るのは子どもなのに……」なんてこと、ありませんか?
その通りです。困るかもしれないのは課題の当事者である子ども自身であって、保護者ではありませんよね。勉強する・しないを選ぶのも、その責任をとるのも子ども自身だということを忘れてはいけません。
気持ちを決めつけない話し方
先ほどの状況で保護者がとるべき行動は、子どもの課題と自分の課題を分けて考え、困ったらいつでも助けになるよと子供に伝えてそっと見守ること。子どもの選択を受け止めた上で求められたら手助けをするというのが、子どもの主体性を尊重している良い関係と言えます。
とはいえ、子どもと保護者のどちらにも関係する「共通課題」が生まれることもあります。共通課題の解決には、「後であなたが困るよ」「パパ/ママのことが嫌いなの?」と子どもの気持ちを決めつけて話すのではなく、「心配だな」「悲しくなっちゃう」と自分の気持ちを伝え、子どもが自分の考え・感じた気持ちを素直に話せる関係を作りましょう。
まとめ
今回は、保育に活かせるアドラー心理学についてご紹介しました。難しそうに見える心理学という分野ですが、一度理解すればさまざまな場面に役立つことがお分かりいただけたかと思います。子どもが自分の課題に立ち向かえるようサポートする「勇気づけ」、自分と子どもが違う事情を抱えていることを理解する「課題の分離」といったポイントを押さえることで、子育てに対する不安を和らげることが出来るのではないでしょうか。
アドラー心理学では子育てにおいて子どもの主体性・自立を重視しています。「自分の子どもにはその子らしくのびのびと育ってほしい」という保護者の方は、ぜひアドラーのテクニックを取り入れてみてはいかがでしょうか?