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無資格の保育士が増える? 規制緩和に保護者や現場の不安も

保育士 無資格
保育士不足が叫ばれる昨今。その緩和として無資格でも働けるというものがあります。国家資格を取らなければならなかった保育士が、無資格でも大丈夫となった場合はどうするのでしょうか。

■保育士不足で規制緩和の動き

子どもを持つ保護者が、子どもを保育所に預けて働きたいのに預けることができない、それが「待機児童問題」です。この問題が深刻さを増しているのは、2016年に入り「保育園落ちた日本死ね!!!」というブログが注目されたことなどから、多くの人が知るところとなりました。「保育園に子どもを預けることが難しい保護者」の姿とともに浮き彫りになったのは「保育士不足」の現実です。政府も保育士不足への対策として待遇改善等を打ち出しています。そんな中、保育所における「有資格者の比率」を下げる規制緩和も検討されています。保育士の国家資格を持っていない、無資格の人が保育の仕事に就きやすくしよう、という動きです。実際の保育の現場では、この動きはどのようにとらえられているのでしょうか。

■無資格でも保育所で働ける仕組み

保育所には保育士の配置基準が定められています。保育士1人あたりで見ることができる子どもの人数や、職員のうちの有資格者の割合などです。この基準を変更することで、無資格の保育者を現場に増やし、保育現場の負担を減らそうというのが政府の考えです。無資格でも保育施設で働けるようにすること、そして、非正規の職員でも正規職員に待遇を近づけ格差を小さくすることを目指しています。保育士ではなく「保育ママ」「子育て支援員」などと呼ばれる人たちが保育の現場に増えることになります。また、条件によっては幼稚園教諭、養護教諭、小学校教諭も保育を担当することができます。

■保育に「人手が増える」メリット

国家資格を持つ保育士が足りないなら、その他の人材で補う……というのはもちろん、人手不足解消につながるメリットがあるから実行することです。保育士不足によって、保育現場では忙しさで職員たちも疲弊しています。子どもを預かるというのは、大切な命を預かり育むことです。責任の重い仕事を人手不足の中、やっていくという状態は好ましくありません。保育者の目が届かなければ、事故などの子どもが危険な目に遭う事態が発生する率も上がってしまいます。子どもの安全、という面ではメリットも大きいでしょう。

■保護者が懸念していることとは

この動きには懸念を示す人もいます。保育の現場の人手不足解消は歓迎するが、それが「無資格」の職員を増やすという方法なのには心配もある、という考えです。多くの保護者としては、子どもを託す相手として、専門性の高い有資格者を選びたいという気持ちがあるのです。専門的に学び国家資格を取った保育士という立場への信頼感です。無資格の保育者が増えることに対し「保育の質が低くなってしまわないのか」「子ども一人一人をしっかり見てくれるのか」という声があがっています。無資格で保育を担当する場合には研修等が義務付けられますが、保護者の感情として不安はぬぐいきれない、ということは理解すべきです。

■有資格者の活躍が望ましい

保育現場の保育士たちからも、規制緩和への不満の声が聞かれます。「本当に子ども達のことを思うのなら『人を増やせばいい』というのは疑問」「有資格者が現場を離れるのは待遇が悪いからだ」などです。足りないのは保育士の資格を持つ人ではありません。有資格者で保育の仕事に就いていない「潜在保育士」は約68万人、というデータもあるくらいです。無資格者を活用するよりも、有資格者が現場に戻れるよう、待遇改善や社会的地位の向上をはかるほうが望ましいのではないでしょうか。子どもは「手厚く」保育されるべきですが、そこには「数」ではなく「質」の理論で対策をすることこそが重要です。保育士不足解消には、保育の専門性への理解や保育士待遇改善への財源確保など、より社会に広く訴えていく施策が必要です。

 

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