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待機児童0なのに、保育園に入れない!?保留児童の現実とは

保育園 待機児童
待機児童の問題が自治体の施策で解消されたと思っていた矢先に明るみになった保留児童。これはどういう問題なのでしょうか。

保留児童という言葉を皆さんは聞いたことがありますか?待機児童問題が世間の注目を集めるにしたがって、それに付随する問題も大きな注目を集めるようになりました。その1つが「保留児童」と呼ばれているものです。

では、この保留児童というものは一体どういうものなのでしょうか?

今回は、いまひそかに増え続けている保留児童について説明していきたいと思います。

保留児童ってなに?

そもそも、「保留児童」とはどんな子どもたちのことを指すのでしょうか。そして、良き言われる「待機児童」との違いはどこにあるのでしょうか。

答えはいたってシンプル...といいたいところですが実はそうではありません。そもそも答えという答えが存在するといえるのかも怪しいところです。

なぜなら、「保留児童」や「待機児童」という言葉の定義はそれを集計し、発表している自治体によってまちまちだからです。

では、各自治体で待機児童について違った見解を出しているのであれば、保育の問題を管轄する国の機関である厚生労働省は「待機児童」という言葉にどのような定義を与えているのでしょうか。

保留児童の定義

2010年(平成22年)3月25日に厚生労働省雇用均等・児童家庭局保育課長の名前のもとに各都道府県や市町村の担当者に向けて発行された「保育所入所待機児童数調査について」という文書があります。ここから厚生労働省が考える「待機児童」という言葉の意味を読み解くことができます。

非常に長い文書なので、要約しますがこの厚生労働省の考える定義は、待機児童問題の現状を考えるとクエスチョンマークがいくつかつく内容です。

まず、こちらの注釈をご覧ください。

  • (注6)産休・育休明けの入所希望として事前に入所申込が出ているような、入所 予約(入所希望日が調査日よりも後のもの)の場合には、調査日時点におい ては、待機児童数には含めないこと。

これは、先ほどの文章の抜粋です。ちょっとわかりづらいですがどういう意味かというと、育休を延長すると待機児童としてのカウントから外されてしまうということです。本当は復職したいけど、子どもを保育園に預けることができないので仕方なく育休を延長したという場合、待機児童にはならないということです。

また、諸々の事情で妊娠・出産のため前の職場を退職したが、新しく仕事を始める求職活動のために子どもを保育園に預けたいという人の場合、以下のようなあいまいな指針が厚生労働省によって示されています。

  • (注1)保護者が求職中の場合については、一般に、児童福祉法施行令(昭和23 年政令第74号)第27条に該当するものと考えられるところであるが、求職活動も様々な形態が考えられるので、求職活動の状況把握に努め適切に対応すること。

これまたよく分からない言葉が並んでいますが、大事になのは一番最後の部分。

「求職活動の状況把握に努め適正に対応すること」

つまりこれは、判断を各自治体に完全に丸投げしているということです。当然、何が「適切な対応」かというのは各自治体によって意見が異なってきます。
例えば、横浜市では「 主に自宅で求職活動されている方:ご自身等でお子さんをみながら、インターネットなどを 利用し、在宅で職を探している方 」を待機児童のカウントから外しています。

確かに、「家でインターネットを使って仕事を探していれば子どもの世話もできるでしょ」という理屈もわからなくはないですがインターネットだけで完結する就職活動などありません。いずれ面接などで外出しなければいけなくなり、その時子どもの世話は家族や知人に頼むしかなくなります。そして、晴れて就職が決まったら決まったで、そこから急いで子どもを預ける場所を見つけなければいけません。

さらに、子どもを認可保育園に入れようと申請したが落ちてしまい、仕方なく無認可保育園に預けているという人がいたとします。この場合、保育できているとみなされ待機児童のカウントからは外されます。

このように、国の定義に厳密に従っていけば、待機児童の数として世の中に発表される数は、実態よりも少ない数になってしまいます。その数字を補完するために、自治体によっては待機児童の定義には当てはまらなが、認可保育園に入ることができなかった子どもの数として「保留児童」という数字を発表している自治体があります。

保留児童の現状

さて、ここまで「保留児童」というのは一体どういうものかについて説明してきましたが、実際のところ「保留児童」はどのくらいいるのでしょうか?

 

保留児童

 

もちろん、自治体によって保留児童というものの数を公表していないところもありますし、そもそも「保留児童」の数も待機児童の数として発表している自治体もあるので、保留児童の数を見ることで一概にその自治体の実態を把握することはできません。

それを頭に入れた上で、横浜市の例をみていくことにしましょう。

横浜市は平成28年4月のデータで、待機児童の数が7人と政令指定都市のなかではかなりの好成績を収めました。この数字から、横浜市はほかの自治体と比べ待機児童問題の解消に力を入れているという印象を持った人が多くいたようですがその実態は違います。

2010年に全国ワーストの1552人で全国ワーストだった数をここまで減らしたのですから、確かに本当であればすごいことです。

しかし、実態は希望者全員が認可保育所に入れたわけではありません。

まず、市や無認可保育園など認可保育所以外の施設に入った人が1527人(2016年10月)、保育所に入ることができず育休を延長した人が1756人、そして自宅で求職活動中の人が680人。

これだけの人が認可保育所に入れないという現状にも関わらず、待機児童の数には含まれていません。ちなみに同時期の横浜市の公式な待機児童の数は391人。しかし、認可保育所に入れなかった人はあと5578人います。この数はすべて「保留児童」として処理されているのです。

ちなみに、全国の政令指定都市のなかで1番待機児童の数が多い市はどこだかご存知ですか?おそらく、皆さんが思っていたところではありません。

政令指定都市のなかで一番待機児童が多いのは岡山市。人口わずか70万人の市です。

岡山市の2016年4月時点の待機児童の数は729人。驚くべきはその増え方。前年同時期の134人から約5.4倍に跳ねあがりました。

これにはもちろん理由があります。岡山市は保護者からのニーズに答え、待機児童の定義を見直し、「保護者が希望する三つの保育施設について利用調整したが、入園できなかった子ども」も待機児童の数に含むようにしました。

つまり、待機児童の数を保留児童とラベルの付け替えをすることをせずに、堂々と公表した結果、全国で最も多い数字となってしまったのです。

保留児童の今後

「保留児童」の問題の根底にあるのは「待機児童」という言葉の定義のあいまいさです。そして、そのあいまいな定義ですら実態を反映するものとなっていないという現状があります。

国が明確で、そして実情に合った「待機児童」の定義を示すことで「保留児童」という言葉で問題があやふやにされることがないようにしかなければいけないのではないでしょうか。

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