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保育園民営化が各地で話題に!公務員保育士はどうすればいいの?

保育園民営化
保育民営化による待機児童の減少施策は、保育園反対運動や民営化による雑な運営体制以外にも問題が起こっています。

公務員保育士

 

公務員保育士という言葉を皆さんは聞いたことがあるでしょうか?

公務員保育士とは、その名の通り、民間の保育所ではなく市町村などの地方自治体が運営する保育園に勤務する保育士のことを言います。

世間一般的な公務員のイメージからして、公務員保育士はほかの民間で働く保育士と比べて待遇が安定している、といった漠然とした印象を持っている人も少なくないのではないでしょうか。

しかし、現実は本当にそうなのでしょうか?

今回は、そんな公務員保育士の現状と将来について考えていきたいと思います。

公務員保育士とは?

公務員保育士になるには

まずは、公務員保育士になるためのプロセスを簡単に振り返っておきましょう。

公務員保育士として地方自治体に採用されるためには、やはり各自治体の保育士採用試験を受ける必要があります。この採用試験についてですが、ほとんどの自治体で実施は不定期、基本的に保育士の欠員が出たときにのみ行われるという形となっている場合がほとんどです。

さらに、保育士採用試験に合格したからといってすぐに公立保育園で保育士としての勤務が開始できるわけではありません。

保育士採用試験に合格した人たちはまず、「採用候補者名簿」というものに名前が載ります。そして、その名簿を見た各保育園、児童福祉施設からお呼びがかかるまではひたすら待つのみ。基本的にその名簿に名前が載るのは1年間だけ。もし、1年以内のどこの施設にも採用が決まらなかった場合は、もう1度保育士採用試験を受けなおすことになります。

あとにも述べますが、公務員保育士は1度採用されると公務員ということだけあり、民間保育所に比べいい待遇でなかなか辞める人が出てこない傾向があります。

そのため、欠員も出ることが少なく、そもそも保育士採用試験が行われる数も限られてきます。さらに、こちらも後で詳しく説明しますが、近年公立保育園の民営化の動きが進んでいることもあり、そもそも公立保育園の数が減少しています。

このようなことがあり、今、公務員保育士になるのは、非常に狭き門になっているいえるでしょう。

公務員保育士の待遇

さて、それでは気になる公務員保育士の待遇はどのようなものなのでしょうか?

まずは以下のデータをご覧ください

全国の保育士の平均給与

給与月額 : 216,100円

年間賞与 : 573,800円(月給2.6ヶ月分)

年収平均 : 3,167,000円

平均年齢 : 34.8歳

(厚生労働省「平成26年度 賃金構造基本統計調査」より)

公立保育所の保育士平均給与

給与月額 : 331,601円

年間賞与 : 1,399,066円(月給4.2ヶ月分)

年収平均 : 5,378,278円

平均年齢 : 44歳

(東京都練馬区「平成26年度 職員の給与の状況」より)

もちろん、厚生労働省が発表している全国のデータと、練馬区だけのデータを単純に比較することはできませんが、その差は歴然です。月給、賞与、年収のすべてで公務員保育士のほうが高い数字となっています。

しかし、収入もさることながら、注目すべきは平均年齢です。公務員保育士の平均年齢は全国の保育士の平均年齢と比べて10歳高いというデータがあります。

その理由としては、このように待遇がほかの保育士と比べていいため、長く働き続ける環境が整っているということがあげられるでしょう。さらに、公の機関ということもあり、育休・産休制度も民間の施設と比べて徹底されています。

実際、公務員保育士の初任給は建前上、民間の水準に合わせて設定されています。しかし、違いが出てくるのは昇給の幅。民間保育園ではなかなか給料が増えていかないいっぽうで、公務員保育士の給料はしっかりと上がっていきます。

また、民間保育園では人件費を安く抑えるために、経験のある保育士よりも、若く経験の浅い保育士を採用する傾向が少なからずあるといえるでしょう。

公務員保育士の今後

公務員保育士,民営化

 

公立保育園民営化

さて、前にも少し触れましたが、近年、地方自治体が運営する公立保育園を民営化する動きが広まっています。

表立った理由としては、保育サービスの向上、つまり、公立保育園では行われることの少なかった延長保育など多様化する働き方に対応できる保育施設づくりがあげられていますが、やはり本音としては行政の支出削減が大きな理由です。

実際東京都では2010年からの5年間で、公立保育園の数が47減りました。事実、多くの自治体は将来すべての公立保育園を民営化することを宣言しており、この流れを変えることはなかなか難しいのではないかと思います。

実際、急激な民営化に反発する動きは各地で発生しています。

2004年には横浜市に対して、保護者と園児が原告となり民営化の取り消しを求める訴訟が起こりました。

この裁判は結局、最高裁まで行き、最高裁は2009年に原告敗訴とした一審、二審判決を覆し、保護者らの訴えを「実質」認める判決を下しました。実は、この「実質」という言葉がカギとなります。最高裁は「保育園を廃止・民営化した条例制定は訴訟の対象となる行政処分に当たる」という二審判決とは逆の判断を下しましたが、条令の違法性、つまり民営化の取り消しにかんしては、当時原告となった園児たちが全員卒園していたため「訴えの利益がない」と上告を棄却しました。

つまり、みんなもう卒園しているのだから民営化取り消したってどうしようもないでしょ、という理屈です。

ここに、公立保育園の民営化に関する裁判における問題点が浮き上がってきます。それは、当事者が常に入れ替わっていることです。

0歳から保育園に入園したとして、長くても5~6年で子どもたちは卒園していきます。実際、この横浜市に対する裁判の第二審で裁判の引き延ばしとも思われるような裁判の延期が行われたのも事実です。

もし、それがなければ裁判の結果は変わっていたかもしれません。

勤めている保育園が民営化されたらどうなるの?

では、実際に公立保育園が民営化されるとそこで働いている公務員保育士はどうなるのでしょうか。

多くの場合、まだ残っている公立保育園に異動となります。そのため、公立保育園が民営化されるとそこで働く職員が総入れ替えというケースが多くなります。これが、公立保育園の民営化に反対する保護者の理由として最もあげられるものです。

しかし、急激な民営化で公立保育園の数が減少しているため、全員に次の職場を用意できないという自治体もあるでしょう。そういった場合、公務員保育士は勤めている自治体で他の業務を担当することになります。つまり、あくまでも異動という形をとりますが、保育士を辞めなければいけないということです。

どうしても保育士を続けたいという場合は、公務員を辞め、民間の保育所に転職するという方法しかありません。

長く安定して、保育士として働けると思って、公務員保育士になることを選んだ人にとって、ある日いきなり保育士を辞めるか、公務員としての待遇と安定を捨てるかという選択を突き付けられることはかなりショックが大きいようです。

最後に

民営化に賛否両論があることはさておいて、現状を見ている限り、公立保育園はいずれゼロになるという現実はおそらく変わりそうにはありません。

しかし、民営化されるからといって行政が保育の責任を投げ捨てているかといえばそれも違います。

保育施設は人員基準、安全管理などの面では民営化前と変わりませんし、行政からの補助金も認可園には支給されます。

民営化が吉と出るか凶と出るかは未来になってみないと分かりませんが「公務員保育士」という言葉がいずれ死語になっていくのは避けようがない現実だと思います。

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