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公園内保育所で待機児童問題は解決する?
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ユーキャン新語・流行語大賞のトップ10に「保育園落ちた日本死ね」がランクインした2016年。保育園に入れたいのに、定員上限に達していて入ることができず、職場に復帰できない――。そんな家庭が少なくない昨今、待機児童問題は今もなお深刻な社会問題となっています。とはいえ、都市部には保育所用地が少なく、騒音問題などから設置反対の声もあがりがちで、保育施設を新設するのもなかなか難しい現状。そこで政府が進めているのが「公園内保育所」の設置です。
都市部で深刻な「保育園を建てる場所がない問題」
女性の社会進出を促しながらも、待機児童問題が解消されていない現状、自治体は緊急対策として、保育所の確保に追われています。保育所の数を増やせば解決するのでは?と思ってしまいがちですが、保育所を建設できる場所というのは限りがあり、そう簡単に解決できる問題ではありません。近年では、いざ保育所を建てようと計画をしても、地域住民からの反対の声が相次ぎ、開園を断念するケースも後をたちません。
反対の理由としては「子どもの声が騒がしい」「資産価値が落ちてしまう」「細い道に送迎の車や自転車が行きかうのが危険」といった声が目立ちます。
待機児童問題を解消するには、保育園の新設は避けて通れない。保育園を新設するには、地域住民に納得してもらわなくてはならない…。こうしたジレンマを抱えた自治体は多く、待機児童問題はなかなか解消されないという実態がありました。
「公園内保育所」は保育所の新規開設問題解決の一手になるか?
政府は、待機児童問題の深刻化を受け、2015年より国家戦略特区と呼ばれるエリアに限って公園内の保育所設置を解禁。
現行では、公園の目的は「災害時の避難場所」や「地域住民のコミュニケーションの場」としての機能が優先されるため、国家戦略特区を除いた公園では、電柱などの限定された設備しか設置することができませんでした。
そこで、政府は2017年2月10日、公園内のスペース活用に向けた規制緩和を柱とした「都市公園法」改正案を閣議決定。成立にいたれば、国家戦略特区でなくとも、公園内に保育所を設置できるほか、公園を管理する自治体が認めれば、放課後児童クラブ(学童クラブ)なども設置可能になるようです。
公園内に保育所をつくるメリットは?
公園内保育所のメリットは、なんといっても用地不足の解消です。都市部、特に東京23区は空き地も少なく、保育所を建設できる土地に限りがあります。都市部ではビルの一室や自治体が所有している建物に保育所を新設するなど、苦肉の策を練って対応してきましたが、それでもまだまだ保育所不足は解消されていません。公園内に保育所を建てることができれば、まず建設スペースの問題が解決します。また、住宅街に建てる保育所とは異なり、騒音問題にたいする懸念が少なくて済むのもメリットです。
公園内保育所に通う子どもたちは、敷地内に公園があるので、いつでものびのびと遊びに出られるのが魅力です。車通りが多い公道をとおって、近隣の児童遊園へでかける必要もありませんので、安全面でもうれしいメリットがあるといえるでしょう。
また、今でこそ深刻な待機児童問題を抱えている日本ですが、少子化が進み、今後子どもの数は減っていく見込みですから、保育所にたいするニーズも減少していきます。そんなとき、公園内保育所であれば、施設を撤去することで元の公園として利用することができますから、跡地の運用についてもスムーズです。
公園内保育所のデメリットは?
公園は子どもからお年寄りまで、多くの地域住民が利用している公共の場所。そんな場所に保育所が開設されるとなると「いままで利用できていたスペースが利用できなくなってしまう」という不便が起こり、反対の声があがる可能性はあります。
それから、園庭がない近隣の保育所の子どもたちの遊び場になっていることもあるでしょうから、保育所側が一般利用者や近隣の保育園の子どもたちに配慮し、利用方法を考えていく必要があります。
全国に先駆けて公園内保育所を設置した東京都荒川区
公園のなかに保育所を。そんな呼びかけに真っ先に手を挙げた自治体が、東京都荒川区でした。東京都23区では、台東区・中央区に次いで3番目に面積の小さい荒川区。日経DUALと日本経済新聞社が2015年に共同で実施した「自治体の子育て支援に関する調査」では、調査対象であった1都3県(東京・神奈川・埼玉・千葉)の主要地区と全国の政令指定都市計100自治体のうち、見事トップにかがやき、子育て世帯に優しい自治体として、注目が高まっています。
全国初の公園内保育所が建設されるのは、都立汐入公園。広大な土地にバーベキュー広場や野外ステージ、テニスコートなどを有した総合公園として、地域の人に親しまれています。JR常磐線・東京メトロ日比谷線・つくばエクスプレス「南千住」駅から徒歩12分と、決して駅近というわけではありませんが、再開発エリアにあるため、休日は高齢者や小さな子ども連れでよくにぎわっています。また、災害時には約12万人の避難広場として、広域避難場所の指定を受け、災害時の復旧・救援活動の拠点としての機能を備えています。
都立汐入公園のある汐入地区近辺は、大規模な槐発により、ファミリー世帯の入居が進み、保育のニーズが特に高いエリアです。これまでにも、区立小学校の空き教室を活用した保育室や、神社の駐車場を区が借り受けて作られた保育園など、さまざまな待機児童対策が行われてきましたが、待機児童問題を解消するのに十分な保育施設を確保できているとは言いがたい状況にありました。
プレイグラウンドを保育園に
都立汐入公園の敷地内に新しく誕生する保育園は、公園内のプレイグラウンドに設置されます。プレイグラウンドは、これまで、地域の人々がゲートボールなどで利用していた場所でした。そこで、保育園を開設するにあたって、プレイグラウンドの代替施設として、保育園の屋上スペースを一般開放できるよう整備。園児だけではなく、地域住民が利用できるよう、配慮されるようです。
保育園に通っていない子どもたちの居場所にも
また、在宅で子育てをしている親子や、公園を訪れた親子が、休憩や授乳・おむつ替えができるような「子育て交流サロン」と呼ばれるフリースペースを園内に設置。保育園に通う親子だけではなく、近隣に住む親子の交流の場としての機能を兼ね備えます。
地域交流こそ「公園内保育所」成功のカギ
公の場である公園を保育所として利用する――そこには、これまで使えていたものが使えなくなるという不満や、災害時はどのように利用するのかといった不安が寄せられることもあるかもしれません。
全国初の公園内保育所開設を宣言した荒川区では、保育園を地域にひらき、交流の場として利用できるよう配慮を行いました。公園内に保育所を作ることに対して、地域の人の合意を得るには、公園の利用者がこれまでどおり公園を利用できるようにしたり、地域住民にとっての交流の場になるようひらいたり…といった配慮が欠かせません。
今後、続々と誕生していく予定の公園内保育所。さまざまな意見がありますが、公園内保育所建設が地域交流のきっかけとなり、地域ぐるみで子育てを行う…といった望ましい養育環境ができていくことも期待できるのではないでしょうか。